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Bizナレッジ

ICTで経営課題の解決に役立つコラムを掲載

労働力不足の解消

ITツール導入の具体的事例を紹介

業務のデジタル化が企業にもたらすメリット

業務のデジタル化が企業にもたらすメリット

新型コロナ感染症をきっかけに多くの企業が、業務のデジタル化の必要性を強く感じるようになっています。

また、生産性の向上は日本企業の大きな課題になっており、それをITツールの導入で克服し、残業時間の大幅な削減等の効率化に成功する企業も出てきています。

今回は、ITツールの導入でどのような業務効率化が可能になるのかの具体的事例や注意点について解説します。

また、業務のデジタル化には「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の3つの段階があります。この3つの違いについてもご紹介します。

日本企業の課題「長時間労働」「生産性」

2021年の中小企業白書によると、日本の労働時間は国際的にも際立って長いことがわかります(図1)。

長時間労働者の比率(国際比較)

図1 長時間労働の国際比較

出所)「2021年版 中小企業白書」中小企業庁

一方、ICT投資額については、日本は他国に比べ低い水準で横ばいが続いています(図2)。

ICT投資額の推移(国際比較)

図2 ICT投資額の国際比較

出所)「2021年版 中小企業白書」中小企業庁

こうした現象について中小企業白書では、
「我が国は諸外国に比べて長時間労働者の比率が高く、また、勤続年数10年以上の雇用者が比較的多くなっていることが確認される。諸外国に比べて日本企業は、社員の長時間労働及び雇用者の高い定着率により、属人的なノウハウや経験が蓄積された従業員が多く存在し、デジタル化による標準化のニーズがこれまで少なかったのではないかと示唆される。」
としています※1

諸外国に比べ、個人の「勘と経験」による経営が続いてきたという指摘です。

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しかし、いまや労働市場は流動的になり、ひとつの企業に長くとどまらず、転職を繰り返す若手・中堅層も少なくありません。団塊世代の大量退職という問題も抱えています。
また、外国人等の雇用に積極的な企業も増えています。

デジタル化による業務の標準化や効率化は、避けては通れない道になったともいえます。

また、新型コロナ感染症を機に、デジタル化の優先順位を高めた企業が増えています(図3)。

時点別に見た、事業方針におけるデジタル化の優先順位

図3 新型コロナ前後でのデジタル化への意識

出所)「2022年版 中小企業白書」中小企業庁

ITツールの導入は、これらの課題を具体的にはどう解決してくれるのでしょうか。2つの事例をご紹介します。

ITツール導入事例〜勤務時間削減や離職率改善も

各種データの管理にExcelを利用している企業は多いはず。

例えば、長野県内の自動車販売・整備会社のケースです。この企業も従来は勤怠データをExcelで管理していましたが、データ入力・修正が何度も必要になっていました※2

しかし事業拡大を図っている最中で、複数拠点で事業を展開しているため、タイムカードでの勤怠管理では月末になると全ての拠点分の勤怠データ集計作業が必要になる、といった業務が発生しています。
事業拡大がさらに進めば、膨大な作業量になってしまう課題がありました。

そこで導入したのが、人事管理と給与計算を行うITツールです。
従業員等の個人属性・就業情報等の登録機能、雇用契約管理機能、シフト管理機能、給与管理機能、分析機能等を備えたツールの導入で、タイムカードによる勤怠管理と給与管理システムを連動させることにより、担当者の締め切り直前の作業が約10時間(2時間×5日)短縮されています。

また、運送業では、マニュアルを電子化することでマニュアル作成・更新の負担を軽減している事例もあります。

大阪市内の配送業者の場合、マニュアルは紙媒体で配送スタッフ用をはじめ130近く作成しており、なかでも配送スタッフ向けのマニュアルは改訂するたびにスタッフへの配布が追い付かないという状況が続いていました※3

そこで導入したのが電子マニュアルツール です。

これにより、マニュアルの改訂がすぐに反映されるようになっただけでなく、従業員が現場で何か困りごとに遭遇した場合、スマートフォン等で見たい項目をすぐに見つけられる大きな利便性が生まれました。
画面に映る手順に沿って作業することで、一人でもスムーズに対応できるのです。

この企業では電子マニュアルの導入により他にもメリットが生まれています。
例えばトレーナーについては、それまではマニュアルがなかったため、教え方や順序に個人差があり、研修に80時間(10日間)を要していましたが、マニュアル導入後の現在は、56時間(7日間)まで短縮されています。

また、業務浸透の徹底、離職率の改善といった変化も起きています。

デジタイゼーション、デジタライゼーション、DXとは

前述したITツールの導入は企業にあらゆる効果をもたらしてくれますが、実はまだ「DX(=デジタルトランスフォーメーション)」の前段階といえます。

業務のデジタル化には「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「DX」の3つの段階があるものの、その違いをうまく説明するのは難しいと感じる方もいるでしょう。
「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「DX」の概念は以下です(図4)。

DXの構造

図4 DXの概念

出所)「2021年版 中小企業白書」中小企業庁

図の概念についてをカメラを例にするとこのような違いになります※4

1)デジタイゼーション:フィルムカメラをデジタルカメラに変えること(アナログ・物理データのデジタルデータ化

2)デジタライゼーション:写真現像の工程がなくなり、オンライン上で写真データを送受信する仕組みが生まれる(個別の業務・製造プロセスのデジタル化)

3)DX(デジタルトランスフォーメーション):写真データを使った新たなサービスやビジネスの仕組みが生み出され、SNSを中心にオンライン上で世界中の人々が写真データをシェアするようになる(事業やビジネスモデルの変革)

ITツール導入事例で紹介した事例は、デジタイゼーション、デジタライゼーションの段階であるといえます。

従業員の負担軽減だけでなく、顧客に新しい体験や恩恵をもたらしたり、全く新しい形のビジネスを生むところまでが揃ってDXなのです。

ITツール導入の思わぬ落とし穴に注意

企業のデジタル化については、注意点があります。実は現在、企業のITへの投資額が必ずしも生産性の向上に繋がっていない傾向があるのです(図5)。

売上高IT投資比率と労働生産性の伸び率

図5 IT投資率と生産性の伸び率

出所)「2021年版 中小企業白書」中小企業庁

これについて中小企業白書では、「デジタル化に対応するために必要のある取り組みが必ずしもIT投資と連動しておらず、表面的な改革にとどまっている問題の可能性」という指摘が紹介されています※1

自社の本質的な経営課題や将来像を明確にし、ITツールを導入する目的を明確にしてこそ、結果につながるのです。

とはいえ、課題を洗い出しても、自社にITに強い人材がいない場合、多くの時間と手間がかかるのも事実。ITツール導入を有益なものにするためには、経営課題の洗い出しから導入のサポートまで、最適解を提示してくれるベンダーと協業することも重要です。

NTTビジネスソリューションズでは、ITツール導入の成功のカギを握るお客さまの業務課題の洗い出しをじっくりヒアリングし、IT化すべき業務を提案します。導入後のサポート体制も整っているので、ITツール導入が初めての企業さま、またすでに導入しているけれども使いこなせないなど不安を抱えている企業さまの疑問、質問にお答えします。

将来的に本格的なDXを実施し、他者との違いをつけられるよう、少しずつ計画的に進めていくことが重要です。


参考資料一覧(ページ数は、参考文献内の表記に準じています)

  1. ※1 「2021年版 中小企業白書」中小企業庁
  2. ※2 「株式会社フジカーランド上田」IT補助金事務局
  3. ※3 「物流・配送会社のための物流DX導入事例集」国土交通省 p23
  4. ※4 「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究の請負 報告書」総務省資料 p6

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