事例紹介株式会社コープ食材 様
美らファーム広見 様
(循環事例)
※掲載内容は取材時の情報です
「食」と「農」の新たな可能性をめざして

「安全安心な食」
「持続する農業」が、
当たり前にある日本へ
株式会社コープ食材
代表取締役 専務
岡田 裕二 氏
「おいしさ」と「安全」に、
「簡単」をくわえたミールキット

株式会社コープ食材は、下ごしらえ済の食材や調味料などがセットになった「ミールキット」を製造する食品会社。コープ自然派事業連合と生協連合会アイチョイスの2つの生協連合会の出資によって設立された企業だ。
家庭の健康的な手作りの食卓を応援したい、という思いで始まったというミールキット。生協の安全基準をクリアした食事を手軽に楽しめるとあって、共働きの忙しい家庭から高齢者の世帯まで、広く好評を博しているという。
処理コストを抑え循環肥料を活用する仕組みへ
家庭で野菜をカットする手間を省くため、ミールキットの野菜はカット済みのものを届ける。工場から大量に出る食品残渣(生ごみ)については、創業後まもなくから堆肥化に取り組んでいたそうだ。「でも当初の処理方法では、堆肥化に年間1,000万円以上かかっていたのです。フォースターズを利用して、一次発酵物をリサイクルセンター※に引き取ってもらう今の仕組みに変更してからは、かなりのコストダウンになりました(岡田専務)」
もちろん、残渣を堆肥にすることがゴールではなく、それをいかに活用するかが大切だという。「いずれはうちの残渣を活用した堆肥を、取引生産者に活用してもらい、その畑でできた作物で再びミールキットを作るという循環を作りたいと考えています(岡田専務)」
- ※リサイクルセンター:ウエルクリエイト社が運営する堆肥製造センター、NTTビジネスソリューションズも運営をサポートしています。

有機栽培の技術は日々進化を続けており、生産者はより良い野菜を作るために最適な肥料を探し続けている。同社でも生産者に望まれる、安価で効果的、そしてもちろん安心安全な堆肥の原料を作り出していくことに力を注いでいきたいという。
環境問題解決への一歩になるおいしい食卓へ
「環境問題に取り組む企業の食品を購入すること」。それは、消費者もその環境問題を解決する取り組みに参加していることと同義である。同社のミールキットについても同様だ。購入した組合員は、ミールキットそのものの価値に留まらず、未来の環境負荷を抑える取り組みに、「食べて」参加しているのである。
食を起点として、日本のオーガニック市場の形成への貢献を続ける株式会社コープ食材。食の安全とビジネス、そして環境意識。この3つをトータルに考えていくことを念頭に、組合員の手作りの食卓と持続可能な農業を応援し続けていくという。
地域の生産者とともに資源循環に取り組む
残渣を堆肥にしてパートナー農家に提供することで、循環型農業を推進
株式会社コープ食材で野菜を加工する行程で必ず発生する食品残渣を、フォースターズ(食品残渣発酵分解装置)で一次発酵物に発酵・分解。それを美らファーム広見と連携し、さらに発酵させることで高品質な循環堆肥へと生まれ変わらせ、野菜の生産へ活用。こうして生産された野菜がふたたび市場へと流通する。
「残渣」を「堆肥」に。そして「堆肥」を「野菜」に活用。協働して資源循環を形成している。
地域の関わり合いの中で資源循環に取り組む

ミニトマトづくりを通して
子どもたちを笑顔に
美らファーム広見
代表取締役
高桑 克明 氏
食の課題を解決する農業の在り方をめざして

コンセプトは「子どもたちが笑顔になるミニトマト栽培」。循環堆肥を活用して、「だるまトマト」と名付けられたミニトマトや小松菜、ホウレン草などの野菜のほか、露地栽培の根菜類、豆類を生産している美らファーム広見。大量の食材が廃棄されている現代の食を取り巻く状況に憂いた高桑代表が、食品残渣を活用した堆肥で新たな野菜を栽培すべく、日々創意工夫と試行錯誤を繰り返している。
「食べれば分かる」その自信に裏付けされたもの
「循環堆肥で作る野菜は、おいしいですよ。他に特別なことをしているわけではないのに、同じ野菜でも味が違う。とにかく食べてみてほしいですね(高桑代表)」。そう言って差し出してくれた野菜の数々は、その言葉に偽りなく、誰もが口に含むとハッとする豊かな味わいを誇っていた。
知多半島には、多くの畜産、酪農農家がいることから、もともと完熟の牛糞堆肥を使用していた美らファーム広見。牛糞堆肥も循環堆肥のひとつではあるものの、より良い堆肥づくりをめざしたいと考えて、食品残渣の活用を決めたという。「地域の畜産家や酪農家、農家さんの方々に少しでも協力できればと考えました。食品残渣の一次発酵物を中心に牛糞堆肥などの副資材を堆肥場で混合、発酵させて、ニューバージョンの循環完熟堆肥を生成したのです(高桑代表)」

循環堆肥のみで栽培していることを、取り立てて発信していなかったというが、循環堆肥の大きな可能性を広く理解してもらいたいという思いから、今後は前面に出してアピールしていきたいと話す。「新たに就農する方々にも、循環堆肥を活用して作物を作ってもらえたら嬉しいですね(高桑代表)」
「おいしい」を届ける。ただそれだけのために

収穫期になると、畑に隣接する直販所には“待ってました!”とばかりにお客様が訪れるという。「とくに子どもたちは素直だから、おいしいものにはとびっきりの笑顔で『おいしい!』って喜んでくれるのです。ついサービスしすぎてしまいますよ(高桑代表)」
人々が喜んでくれてこその農業。その人々が生きる環境を農業が壊してはならない、と強い思いを抱いて畑に立っていると語ってくれた。
美らファーム広見が見つめる未来

近年の異常な温度上昇は、同農園でもミニトマトやトマトの苗に悪影響を及ぼしているという。かつては5月中旬までが収穫時期だったトマト。最近は、春の穏やかな気候の時期が極端に短く、すぐに初夏のような気温になるため、トマトの収穫は、近いうちに4月初旬くらいまでになるのでは、と高桑代表は予想する。
「このような状況が続けば、すべての作物の収量が減り、野菜がさらに高値になることが予測されます。私たち農家が、食品残渣堆肥を利用することは、おいしい作物づくりに限らず、CO2削減や脱炭素化への道を少しでも切り拓くキッカケになるかもしれない。異常気象改善に向けて、少しでも貢献できればと思っています(高桑代表)」
企業紹介
安全な食材を使った、便利で美味しい商品を通して生協組合員さんの手作り食卓を応援
株式会社コープ食材
設立 | 2015(平成26)年 |
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本社 | 兵庫県神戸市西区見津が丘3-9-7 |
社員数 | 180人(2024年9月時点) |
事業内容 | 生協ミールキット(食材セット)の製造 |
URL | https://coop-syokuzai.jp/ |
子どもたちの笑顔のために育てるミニトマト
土づくり、循環堆肥づくりが大切
美らファーム広見
設立 | 2018年(平成30年)5月 |
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本社 | 愛知県知多市新広見159 |
社員数 | パート・アルバイト含め3名(2025年3月末時点) |
事業内容 | 循環堆肥のみで栽培した野菜の栽培、販売(ミニトマト、トマトをメインにサラダ用野菜)循環堆肥の生産、管理 |
URL | https://www.instagram.com/darumaminitomato/ |