このページの本文へ移動

プロ野球地上波放送として西日本エリア初の
IOWN APNを活用したリモートプロダクションを実現

(報道発表資料)

2025年11月07日
NTT西日本グループ

 NTT西日本グループ※1は、関西テレビ放送株式会社(以下、関西テレビ)と共同で、2025年9月6日に京セラドーム大阪で開催されたプロ野球公式戦「オリックス・バファローズ 対 北海道日本ハムファイターズ」の地上波放送向け中継において、IOWNオールフォトニクス・ネットワーク(以下、「IOWN APN」)※2※3を活用し、データセンター集約型の制作設備を遠隔操作するリモートプロダクション※4環境を構築・運用しました。

 本取り組みは、西日本エリアのプロ野球地上波放送において、IOWN APNを活用した制作機能をデータセンターに集約することで、遠隔地からの番組制作を実現した初めての取り組みとなります。

1.背景

 現在、イベント会場での映像制作については各種制作機器を搭載した中継車を使うのが一般的です。しかし、中継車を利用した現地での制作体制は、機材や人員を物理的に配置する場所の確保に制約があり、また中継車の維持コスト、スタッフを含めた現地派遣コストに加え、都度発生する制作環境構築のためのリードタイムも課題となっています。このため、制作ワークフロー全体の効率化と、放送局内の充実した設備を活用したより高度で快適な制作環境へのシフトが求められています。

 NTT西日本グループは、次世代のコミュニケーション基盤IOWN構想の主要技術であるIOWN APNの大容量・低遅延・ゆらぎなしの特長を活用することで、この課題解決をめざしています。

2.取り組み概要

 本取り組みでは、データセンターと京セラドーム大阪および関西テレビ本社を、IOWN APNの技術を活用した「All-Photonics Connect powered by IOWN」※5にて接続した上で、中継制作の核となる主要な制作機能(IPスイッチャー※6、PTPグランドマスター※7)をデータセンターに集約しました。さらに、関西テレビ本社から、IOWN APNの超低遅延ネットワークを通じてデータセンター上の制作設備を遠隔操作することで、スイッチャーやミキサー担当者が現場にいなくとも地上波放送向けの高品質な番組制作が可能であることを実証しました。

 将来的に上記の環境が確立されれば、中継車の手配や大規模な現地設営を省力化でき、番組制作稼働の効率化、個別の設備投資・維持管理コスト、構築リードタイムの削減が可能となります。また、CCUを必要としないスタジオカメラ※8を利用した運用※9にも成功しました。

newsrelease20251107_iownapn_img01_r1.png

図1:提供イメージ

■取り組みのポイント

 本実証における技術的成功と運用上のメリットは以下の通りです。

【超低遅延遠隔操作の実証】

  • IOWN APNを通じて、関西テレビ本社からデータセンター上の制作設備を遠隔操作。映像スイッチングにおいても遅延を意識することなく、現場と同じ感覚で制作ワークフローが実行できることを確認しました。
  • データセンターから京セラドーム大阪および関西テレビ本社向けに、IOWN APNを経由したPTP時刻同期信号を伝送。IOWN APNのゆらぎなしの特性を生かした、安定した時刻同期が実現できることを実証しました。

【制作機能集約による効率化の実証】

  • 京セラドーム大阪の映像・音声信号をデータセンターに伝送し、データセンターに設置された設備を用いて番組制作を実施。これにより、将来的に本方式を確立することで、中継車の手配や大規模な現地設営の労力が省力化される見通しを得ました。

3.本取り組みに関するコメント

■関西テレビ放送株式会社
IOWN APNを活用したリモートプロダクションの実証は、今回が2回目です。前回は大阪・関西万博会場におけるイベントの配信コンテンツ制作でしたが、今回は地上波放送での取り組みとなり、これまで以上に緊張感のある貴重な経験となりました。実地運用だからこそ、机上の検討では見えなかった課題を抽出することができました。MoIP(Media over IP)機器をほとんど保有していない当社にとっても、今後の設備計画を具体化するうえで有意義な機会でした。今後、運用面や費用面でも具体的な検討を進めていきたいと思います。

4.今後の展開

 NTT西日本グループは、今回の取り組み結果を踏まえ、放送事業者が共通で利用できるデータセンター集約型のメディア向けIP設備の構築を推進し、IOWN APNを活用したリモートプロダクション技術の高度化と標準化に推進してまいります。これにより、放送業界の制作設備の共同利用と運用効率の飛躍的な向上に貢献してまいります。

 なお、IOWN APNの特性である大容量・低遅延・ゆらぎのない通信環境に対応した中継拠点として、関西では京セラドーム大阪、阪神甲子園球場など、主要な拠点での活用を進めており、その他の拠点についても順次拡大を予定しております。

 また、本取り組みの内容につきましては、「InterBEE 2025」に出展いたします。

  • 会期:2025年11月19日(水)~21日(金) 10:00~17:30(最終日のみ17:00終了)
  • 会場:幕張メッセ(千葉市美浜区中瀬2-1)
  • NTTビジネスソリューションズブース:ホール7 ブース番号:7305

 取り組みの詳細や、他拠点・他コンテンツでの利用検討について対面で意見交換が可能ですので、ぜひブースにお立ち寄りください。

5.本件に関するお問い合わせ先

NTTビジネスソリューションズ株式会社
バリューデザイン部 ソーシャルイノベーション部門 吉田、松永、平田
Email:

  • ※お問い合わせの際は、メールアドレスをお確かめのうえ、お間違えのないようお願いいたします。
  • ※1 NTT西日本グループは、NTT西日本(株)、NTTビジネスソリューションズ(株)、NTTスマートコネクト(株)、および(株)NTTSportictが対象です。
  • ※2 IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想とは、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、光を中心とした革新的技術を活用し、高速・大容量通信ならびに膨大な計算リソースなどを提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想です。
    IOWN構想とは:https://www.rd.ntt/iown/index.html
  • ※3 APN(All-Photonics Network)とは、ネットワークから端末まで、すべてにフォトニクス(光)ベースの技術を導入し、これにより現在のエレクトロニクス(電子)ベースの技術では困難な、圧倒的な低消費電力、高品質・大容量、低遅延の伝送を実現します。
    オールフォトニクス・ネットワークとは:https://www.rd.ntt/iown/0002.html
  • ※4 イベント会場等の中継先と放送局をIPネットワークで接続し、放送局から中継先のカメラ等の機材を遠隔操作することで、リモートで番組制作を行う手法です。
  • ※5 All-Photonics Connect powered by IOWN:All-Photonics Connectとは、お客さまの指定する拠点間をPoint to Pointで接続し、800Gbpsまでの、高速・大容量、低遅延・ゆらぎのない通信を実現します。
    All-Photonics Connect powered by IOWNとは:https://business.ntt-west.co.jp/service/network/iown/
  • ※6 IPスイッチャー:パナソニック コネクト社製品KAIROS「AT-KC200T」(ST2110対応)を採用
  • ※7 PTPグランドマスター:PTP(Precision Time Protocol)は、高精度な時刻同期を実現するためのネットワークプロトコルです。PTPグランドマスターは、そのPTPにおいて、ネットワーク全体に高精度な時刻情報を供給する起点となる装置(マスタークロック)をさします。
  • ※8 スタジオカメラ:パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション社製「AK-UCX100」を利用。
  • ※9 CCU(Camera Control Unit)レス運用: 通常はROP(Remote Operation Panel)とCCUを組み合わせて使用することにより、撮影現場にあるカメラの映像信号や色合い、明るさ(アイリス)、黒レベルといった画質の調整を実現しています。CCUレス運用とは、このCCUの機能がカメラ本体(カメラヘッド)に組み込まれているカメラを利用することで、外部にCCUを設置する必要をなくし、リモート制御を行う運用手法です。
  • ※10 NTTスマートコネクト(株)のデータセンターを利用。

※ニュースリリースに記載している情報は、発表日時点のものです。現時点では、発表日時点での情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承いただくとともに、ご注意をお願いいたします。