IOWN APNで実現する共同利用型リモートプロダクションを
大阪・関西万博で実施
~アフター万博における中継制作の新たなステップへ~
ニュースリリース
(報道発表資料)
2025年11月13日
NTT西日本グループ
NTT西日本グループ※1は、2025年大阪・関西万博の会期中、複数の放送局へIOWN APN※2※3を利用したリモートプロダクション※4環境を提供し、在阪放送局と共同で実施した実証実験を成功させました。※5
本実証の結果、IOWN APNの持つ「大容量・低遅延・ゆらぎゼロ」の特徴により、番組制作に求められる高品質かつ安定した映像伝送を高いレベルで実現しました。これにより、番組制作ワークフローの効率化と設備投資最適化に向けた可能性が示唆されました。今後は環境提供に向けた検討を加速させ、早期のサービス事業化をめざしてまいります。
1.取り組み結果
本取り組みでは、NTTスマートコネクトのデータセンターと万博会場および放送局を、IOWN APN技術を用いた「All-Photonics Connect powered by IOWN※6(以下、All-Photonics Connect)」で接続した上でデータセンターに集約した制作機能を利用し、共同利用型のリモートプロダクション環境を提供しました。

(1)利用実績
在阪放送局4局に、番組制作の一環として、IOWN APNをリモートプロダクション環境での利用に加え、映像データの伝送路として活用しました。
①リモートプロダクション環境を「中継番組制作」に利用
万博会場で撮影した複数の映像をデータセンターへ伝送し、データセンター上の制作機能を放送局から利用し、中継番組を制作
②映像データの「伝送路」としての利用
万博会場で撮影した複数の映像を放送局へ伝送し、放送局のスタジオ(副調整室)と連携し番組を制作
(2)評価結果
◆技術観点
本実証では、冗長を考慮したネットワーク環境のもと、リモートプロダクションが支障なく行えることを実証しました。
- リモートプロダクションに必要な各種通信(映像、音声、時刻同期信号、制御系通信、インカム、Tally※7等)
- SMPTE ST2110※8による非圧縮での映像伝送
- All-Photonics Connectを2経路利用した、SMPTE ST2022-7※9によるメディア面の冗長
◆運用観点
実際の番組制作における有用性を検証・評価した結果、運用面において以下4つのメリットがあることを実証しました。
- 拠点間の円滑なコミュニケーションの実現
遠隔地間のインカムを用いた遅延のないシームレスな音声通話を可能とした - 一貫した制作ワークフローの確立
撮影から番組制作・送出に至るまでの一連の制作工程を、遠隔から支障なく実施できることを確認した - 柔軟性の高い運用
接続先の拡張や各種設定変更に柔軟に対応でき、放送局の番組制作要件に適応可能な運用性を確保した - 設備投資の最適化
必要なときに必要なリソースを共同利用型で活用でき、放送局の設備投資や維持コストの最適化の可能性を確認した
(3)各社のコメント
◆朝日放送テレビ株式会社
IOWN APN回線の特性について、局外設備が局内と等価的に扱えることに驚きを感じました。今後、全国に低廉化した回線が張り巡らされることに期待しています。また、局間で設備を共用できることも大きな魅力であると感じています。
◆関西テレビ放送株式会社
8台のカメラとバーチャル背景を使い、リモートプロダクションで音楽番組「いのち輝く吹奏楽」を配信しました。IOWN APNやIPスイッチャーを実際の現場で運用できた貴重な機会であり、その中で課題も多く見つかりました。今後、設備・運用・費用の面で具体的な検討を進めていきたいと思います。
◆読売テレビ放送株式会社
超低遅延回線のIOWN APNを使用することで、万博会場と放送局の距離を感じることなくストレスの無い番組制作ができました。リモートプロダクションのシステム・回線等のコストなどの課題もありますが、今後の運用を検討するにあたり、大きな一歩になりました。
2.今後の展開
NTT西日本グループは、今回の実証で提供したNTTスマートコネクトのデータセンターをハブ(中継拠点)とし、複数のイベント会場と制作拠点をAll-Photonics Connectで接続し、リモートプロダクション機能を共同利用型で提供する「メディアハブ(仮称)※10」のサービス化に向けた検討を本格化させてまいります。
特にリモートプロダクションについては、今後より多くの番組で活用いただけるよう、今回の実証実験で明らかとなった課題解決に取り組みつつ、積極的に提供環境の整備を進めています。なお、IOWN APNの特性である大容量・低遅延・ゆらぎのない通信環境に対応した中継拠点として、関西では京セラドーム大阪、阪神甲子園球場など、主要な拠点での活用を進めており、その他の拠点についても順次拡大を予定しております。
今後は、リモートプロダクション利用可能な会場(べニュー)の拡大に加え、AIを活用した映像分析や編集支援などの機能強化を進めます。これにより、映像制作のDX推進のみならず、コンテンツ品質の向上にも貢献し、メディア業界全体のさらなる発展を力強く牽引してまいります。
本取り組みの詳細は、InterBEE2025開催期間中に登壇予定の以下のセミナーにてご紹介いたします。ぜひお立ち寄りください。
■日時
2025年11月19日(水)14:00~15:30
■場所
幕張メッセ内、国際会議場1階「104」
■テーマ
万博における共同利用型リモートプロダクションを運用して得た知見と課題(仮)
■登壇企業
NTTビジネスソリューションズ株式会社
NTTスマートコネクト株式会社
パナソニック コネクト株式会社
日本放送協会
朝日放送テレビ株式会社
関西テレビ放送株式会社
読売テレビ放送株式会社
3.本件に関するお問い合わせ先
NTTビジネスソリューションズ株式会社
バリューデザイン部 ソーシャルイノベーション部門 吉田、松永、平田
Email:
NTTスマートコネクト株式会社
メディアビジネス部 放送DX 安永、清木場、井上
Email:
- ※お問い合わせの際は、メールアドレスをお確かめのうえ、お間違えのないようお願いいたします。
- ※1 NTT西日本グループは、NTT西日本(株)、NTTビジネスソリューションズ(株)、NTTスマートコネクト(株)、および(株)NTTSportictが対象
- ※2 IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想とは、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、光を中心とした革新的技術を活用し、高速・大容量通信ならびに膨大な計算リソースなどを提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想です。
IOWN構想とは:https://www.rd.ntt/iown/index.html - ※3 APN(All-Photonics Network)とは、ネットワークから端末まで、すべてにフォトニクス(光)ベースの技術を導入し、これにより現在のエレクトロニクス(電子)ベースの技術では困難な、圧倒的な低消費電力、高品質・大容量、低遅延の伝送を実現します。
オールフォトニクス・ネットワークとは:https://www.rd.ntt/iown/0002.html - ※4 イベント会場等の中継先と放送局をIPネットワークで接続し、放送局から中継先のカメラ等の機材を遠隔操作することで、リモートで番組制作を行う手法のこと
- ※5 大阪・関西万博におけるIOWN APNを活用したリモートプロダクション環境を共同利用化 ~データセンター集約型のメディア向けIP設備で番組制作のDXを実現~
https://www.ntt-west.co.jp/news/2502/250220a.html - ※6 2024年11月18日報道発表 世界最高水準となる最大800Gbpsのユーザー拠点間帯域保証型通信サービス「All-Photonics Connect powered by IOWN」の提供開始
https://www.ntt-west.co.jp/news/2411/241118a.html - ※7 Tallyとは、放送や収録中にどのカメラ映像が採用されているかをカメラマンや出演者に知らせるための仕組みです。
- ※8 SMPTE ST2110とは、IPネットワーク上で放送用途等のプロフェッショナルな映像・音声を伝送するための国際標準規格です。
- ※9 SMPTE ST2022とは、IPネットワーク上で放送用途等のプロフェッショナルな映像・音声を伝送するための国際標準規格であり、SMPTE ST2022-7はその中の伝送路間のシームレスな切替について定められたものです。
- ※10 サービス名称については現在検討中です。
※ニュースリリースに記載している情報は、発表日時点のものです。現時点では、発表日時点での情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承いただくとともに、ご注意をお願いいたします。