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環境・エネルギー対策

微生物がつなぐ食品資源の循環型社会

低コストで実現する企業の食品ロス対策

食品ロスとは、本来なら食べられるのに廃棄されてしまう食品群で、「フードロス」とも呼ばれます。企業による食品ロス対策は、環境問題や世界的な人口増加による深刻な食糧不足問題を解決する上で重要です。しかし、コストが問題となり十分に取り組めていない企業も少なくありません。

そこで本稿では、国内における食品ロスの現状と、企業による対策の必要性、低コストで食品廃棄物を抑制するソリューションを紹介いたします。

日本の食品ロスの現状

食品ロス発生量(令和2年度推計値)

農林水産省および環境省が2022年に発表した日本の食品ロス発生量(令和2年度推計値)※1によると、2020年の不可食部を含む食品廃棄物等は年間2,372万トンでした。その内、可食部の食品ロス量は約522万トンで、食品関連事業者によるロスは275万トンとなっています。

国連の食糧支援機関であるWFP(国際連合世界食糧計画)は飢餓に苦しむ84ヶ国に対し、2020年に420万トンの食料支援を実施しています。日本の食品ロスの量は、WFPの食料支援量を約100万トンも上回っている現状があります。

次に、2022年に農林水産省が発表した、食品関連事業者別の再生利用実施率※2を見てみましょう。食品関連事業者には、食品製造業、食品卸売業、食品小売業、外食産業が含まれます。

2020年(令和2年度)食品関連事業者別再生利用等実施率

2020年(令和2年度)における食品製造業の再生利用実施率は96%であり、食品産業全体の86%と比較しても高い数値です。食品卸売業と食品小売業はそれぞれ68%、56%の実施率となっています。

一方、外食産業の実施率は31%と低い状況です。外食産業の食品ロスは81万トンで全体の29%を占めており、食品ロス発生抑制の取り組みが特に必要とされています。

  1. ※1 出典:農林水産省「食品ロス量(令和2年度推計値)を公表」、環境省「我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和2年度)の公表について
  2. ※2 出典:農林水産省「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢」を元に作成

なぜ食品ロス対策が重要なのか?

近年、食品ロス対策の重要性が増している理由について解説します。

世界レベルで加速する循環型社会へのシフト

食品ロス対策が重要な理由として、日本だけでなく世界レベルで「循環型社会」へシフトしている点が挙げられます。循環型社会とは、限りある資源を効率的に利用し、廃棄されるものを再利用して循環させ、環境負荷を低減させる社会です。

循環型社会への移行が求められる背景として、世界的な人口増加による、食糧不足のリスクが挙げられます。深刻な食糧不足に陥る前に、製造工程での無駄をなくし、消費効率を高める等、効果的なサイクルを社会全体で実現することが重要です。

また、従来の大量生産と大量消費が前提となる社会では、大量廃棄が大きな問題となっていました。日本において食品廃棄物は主に焼却処分されています。その際、二酸化炭素等の温室効果ガスが排出されてしまうことで、地球温暖化が加速することが懸念されています。

一方、海外において食品廃棄物は主に埋め立て処分されますが、温室効果が高いメタンが排出される点が懸念事項となっています。このまま食品ロス対策をせず放置し続けると、環境負荷はさらに大きくなってしまうでしょう。

そこで、従来の大量廃棄を前提とした社会ではなく、循環型社会の実現に向け具体的な対策が急務となっているのです。

SDGsによる具体的な目標設定

上記のような背景もあり、2015年の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)では、食品ロスや廃棄削減について次のような目標が設定されました。

  • 2030年までに小売り・消費レベルにおける世界全体の一人あたりの食料の廃棄を半減させる
  • 2030年までに廃棄物の発生防止、削減、再生利用および再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する

SDGsは達成年限を2030年として、食料の廃棄量や再生利用等具体的な目標を掲げ、環境負荷を低減することが目的です。SDGsの目標達成には、国や地方だけでなく、企業の積極的な取り組みも必要不可欠です。

食品リサイクル法等による目標設定

2019年7月に発表された「食品リサイクル法の基本方針」では、2000年と比較して、SDGsもふまえ2030年までに事業者の食品ロス量を半減させることが目標に掲げられました。

食品リサイクル法では、食品関連事業者に対し、外食産業での売れ残りや食べ残し、食品製造業で発生する廃棄物の削減やリサイクルに取り組むことが求められています。業種ごとに再生利用等実施率に関する目標※2が設定されていて、次のとおりです。

業種 目標値
食品製造業 95%
食品卸売業 75%
食品小売業 60%
外食産業 50%

なお、十分に再生利用等の対策を実施しない事業者に対しては、勧告や公表、命令が行われ、違反した場合は50万円以下の罰金が発生します。

また食品ロス削減推進法では、食品関連事業者に対して原料の無駄のない利用、製造や出荷の適切な管理、鮮度の保持、納品期限の緩和等が求められています。

  1. ※2 出典:農林水産省「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢」を元に作成

企業ができる食品ロス対策

食品ロス対策は、「使い切る」と「リサイクル」の大きく二つに分けられ、この両輪をしっかりと回すことが重要です。食品製造業や小売業、外食産業等の食品関連事業者ができる食品ロス対策について解説します。

規格外食材の活用

味は問題ないけれど色や形、大きさが通常とは異なっていたり、傷がついたりした規格外食材の活用は、食品ロス対策のひとつです。具体的には、規格外食材のECサイトでの展開や、冷凍食品に加工して販売する等があります。

消費者は新たな加工食品を楽しみ、低価格で食材を手に入れることができ、事業者は食品ロスを削減しながら新たな販路を見出せる点がメリットです。

3分の1ルールの見直し

食品業界の「3分の1ルール」

食品メーカーやスーパーといった小売店の間には、「3分の1ルール」※3と呼ばれる商慣習が存在しています。製造日から賞味期限までの期間を3分の1ずつ分ける考え方で、賞味期限を長く確保して鮮度の高い食品を、小売店で並べるために実施されているルールです。

このルールでは、例えば賞味期限が6ヶ月の場合、製造業者は、賞味期限の3分の1となる2ヶ月以内にスーパー等に納品しなければならず、2ヶ月を超えた食品は賞味期限に余裕があるにもかかわらず廃棄となる可能性があります。

そこで納品期間を2分の1へと見直す「2分の1ルール」を推進することで、納品期限の緩和による食品ロス削減が期待されています。

  1. ※3 出典:消費者庁「食品ロス削減ガイドブック」を元に作成

製造から消費までの各過程での食品廃棄物のリサイクル

食品ロス対策の「使い切る」と「リサイクル」の内、規格外食材の活用や3分の1ルールの見直しは「使い切る」に焦点をあてた取り組みといえます。

もうひとつの重要な取り組みである食品事業者における廃棄物の「リサイクル」には、飼料化、堆肥化、メタン化等があります。

食品製造業では、畜産農家の需要拡大も相まって、おからや大豆、米ぬか等の廃棄物を使い製造する飼料化が有効です。外食産業等で発生する調理くず等は、微生物を使って分解する堆肥化に向いています。

包装紙やプラスチック等の混入により分別が難しい廃棄物でも、メタン発酵によりバイオガスを生成するメタン化が利用できます。ただし設備にコストがかかるといったデメリットも存在します。

企業に立ちはだかるコストの壁

食品ロス対策は官民が連携して取り組むべき重要課題ですが、企業にとってコストの問題は避けて通れません。

規格外食材の活用や3分の1ルールの見直しは、食品ロスの発生を抑制する取り組みでありながら、新たな販路を開拓する取り組みともいえます。

しかし、リサイクルについてはコスト増として扱われる傾向にあり、特に食品関連事業は消費に近くなるほど分別が難しく手間がかかると同時に、機器の導入にも費用がかかります。そのため、企業の取り組みにはバラつきが生じているのが現状です。そこで、次にお伝えするような低コストで廃棄物をリサイクルできる新しいソリューションが、コストの壁を超える有効打となり得ます。

低コストで廃棄物をリサイクルする「地域食品資源循環ソリューション」

NTTビジネスソリューションズは、低コストで地域内の食品リサイクルが実現する「地域食品資源循環ソリューション」を提供しています。

食品ロスが発生する製造現場や店舗に「フォースターズ」という、廃棄物を発酵、分解する装置を設置。現地で発酵させ、食品リサイクル会社が回収してリサイクルセンターにて発酵を繰り返し、堆肥へと変えます。そして、農作物の生産者に堆肥を提供することで、地域において資源を循環させる仕組みが実現するのです。

レンタル契約でご提供するため、初期費用はかかりません。ランニングコストも従来の焼却処理と比較して、大幅に抑えられる点が大きな特徴です。飲食店から大規模な食品工場まで対応が可能です。温室効果ガスも排出しないため環境にやさしく、地域における循環型社会の実現に寄与します。

ソリューションについての解説動画はこちら

まとめ

企業による食品ロス対策は、循環型社会やSDGsを実現する上で欠かせません。しかし、食品廃棄物を減らしリサイクルするにはコスト増という新たな課題に向き合う必要があります。

NTTビジネスソリューションズの「地域食品資源循環ソリューション」を導入すれば、従来の処分方法よりもコストを抑えて廃棄物をリサイクルできます。さらにゴミを焼却処分する必要がなく、温室効果ガスの排出を抑止します。

地球環境にやさしい方法で食品ロスを堆肥に変え、農家に提供することでリサイクルコミュニティが実現します。同ソリューションの導入に関しては、以下のリンクからお問い合わせください。

関連リンク

地域食品資源循環ソリューション
https://www.nttbizsol.jp/service/foodwaste-recyclingsolution/

地域食品資源循環ソリューションに関するお問い合わせ
https://form.nttbizsol.jp/inquiry/foodwaste-recyclingsolution

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