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環境・エネルギー対策

食品リサイクル法における再生利用等実施率の現状
目標値に向けた取り組み事例も紹介

食品リサイクル法に基づく「食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針※1により、2024年度までに達成すべき再生利用等実施率の目標値が設定されています。2019年7月に発表された「食品リサイクル法に基づく基本方針」※2では、2030年度を目標に2000年度比で食品ロスを1/2にする目標も掲げられました。これにより、食品関連企業は目標達成に向けて、事業プロセスの抜本的な見直しを行わなければなりません。

本稿では、食品残渣における再生利用等実施率の現状や、再生利用等実施率を向上させるための取り組みについて解説します。後半は、食品リサイクルの推進に寄与できる地域食品資源循環ソリューションの概要と施策事例について紹介します。

食品残渣における再生利用等実施率の現状

食品リサイクル法は、正式名称を「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」といい、大量発生している食品残渣の発生抑制・減量化による処分量の減少および、飼料や肥料等の原材料として有効活用し、食品環境資源の再利用を促進するために食品関連事業者に対して制定されました。

食品リサイクル法に基づく「食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針」では、業種別に再生利用等実施率の目標値が設定されています。

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以下を参考に図を作成しています。
出所)農林水産省「食品リサイクルの現状

再生利用等実施率は以下の式で算出されます。

再生利用等実施率 = 対象年度の(発生抑制量 + 再生利用料 + 熱回収量 × 0.95 + 減量量)÷ 対象年度の(発生抑制量 + 発生量)

2024年度までに達成すべき再生利用等実施率の目標値は上図のとおり、食品製造業が95%、食品卸売業が75%、食品小売業が60%、外食産業が50%と設定されています。

農林水産省が2021年度に発表した「令和2年度食品廃棄物等の年間発生量及び食品循環資源の再生利用等実施率(推計値)※3によると、食品製造業は96%、食品小売業は68%となっており、目標を達成しました。

一方、食品卸売業は68%、外食産業は31%と、平成29年度までの実施率推移とほぼ変わらず、未達成となっています。

食品関連企業が負担となっている食品残渣の処理コスト問題やその解決方法、また食品残渣リサイクルにおける課題をまとめた以下の記事もあわせてご覧ください。

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再生利用等実施率を向上させるための取り組み

食品卸売業と外食産業の再生利用等実施率が未達成である中、達成目標年度である2024年度が差し迫っています。外食産業の再生利用等実施率は31%と、目標値の50%と大きな乖離がある中、再生利用等実施率を向上させるためにどのような取り組みがなされているのでしょうか。

一般財団法人食品産業センターによれば、食品リサイクルにおける再生利用等に取り組む優先順位を次のように定義しています。※4

  1. 食品残渣、食品廃棄物等の発生を抑制するための取り組み
  2. 食品残渣、食品廃棄物等の再生利用を促進するための取り組み
  3. 食品残渣、食品廃棄物等の熱回収を実施するための取り組み
  4. 食品残渣、食品廃棄物等を減量するための取り組み

ここでは、再生利用等実施率を向上させるための各取り組みの概要についてみていきます。

食品残渣、食品廃棄物等の発生を抑制するための取り組み

製造・流通・消費の各過程において、工夫やあり方の見通し等を行い、食品残渣そのものの発生を抑制するステップです。食品残渣の発生を抑制する取り組み例は、業界別に次のとおりです。※5

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これらの取り組みをスムーズに実施していくためには、消費者に認知してもらい、理解を得なければなりません。消費者の認知・理解を深めるためには、食品関連事業者は上記のような取り組みをPRしていく必要があります。

食品残渣、食品廃棄物等の再生利用を促進するための取り組み

食品残渣のうち、再資源化できるものを飼料や肥料、炭化製品、メタン、エタノールの原料等として再生利用するステップです。

再生利用を推進するための取り組み例としては、以下が挙げられます。※6

  • 食品廃棄物を飼料化する
  • 包装や食器、爪楊枝等食品以外の物品は分別する
  • 有機質肥料の利用先(市場や農家等)を確保したうえで肥料化する

場合によっては、樹脂化や医薬品材料等も再生利用として認定されることがあります。そのため、これらを再生利用として取り組む場合、認定有無を設備投資・業者との契約締結前に農政事務所や農政局に相談してみるとよいでしょう。

上記のうち、優先度が高いのは、「食品廃棄物の飼料化」です。飼料化は食品循環資源における成分やカロリーを最も効率よく活用できる手段です。農林水産省によれば、日本の飼料自給率はたった25%で、多くを輸入に頼っている現状があります。※7

食品廃棄物の飼料化が進めば、日本の飼料自給率の向上に寄与できます。また、自社で再生利用の推進が難しい場合、食品リサイクルを受諾している企業に委託したり、譲渡したりすることも可能です。

農林水産大臣の登録を受けた再生利用事業者については、農林水産省が公開している一覧から確認できます。※8

食品残渣、食品廃棄物等の熱回収を実施するための取り組み

再生利用が困難な場合に実施できる取り組みが熱回収です。ただし、熱回収を実施できるのは、再生利用が困難な食品循環資源か、メタンと同等以上の効率でエネルギー回収できる場合のみです。

メタンと同等以上のエネルギー効率とは、以下のことをさします。

  • 食品循環資源のうち、廃食用油または同程度の発熱量(35MJ/kg以上)のあるものの場合は、1トン当たりの利用で得られる熱量が、28,000MJ以上であること
  • 上記以外の食品循環資源の場合は、1トン当たりの利用で得られる熱またはその熱を変換して得られる電気量が、メタンと同等の160MJ以上であること

引用:一般財団法人食品産業センター-熱回収する

再生利用が困難な食品循環資源が上記に該当したとしても、これだけでは熱回収を実施することはできません。熱回収の実施可否にはいくつかの条件があるからです。

熱回収を実施するうえで求められる条件は次のとおりです。※9

  • 食品循環資源の再生利用ができる施設が半径75km圏内にない
  • 食品循環資源の性質と状態、再生利用施設の立地状況や熱回収を行う施設の名称を把握、記録する
    • 食品循環資源の種類が対象施設で扱えない
    • 食品循環資源の塩分濃度が高い、繊維分が多い等、再生利用施設で受け入れられない性質と状態である
    • 施設の処理能力の観点から受け入れができない

食品残渣、食品廃棄物等を減量するための取り組み

食品残渣は水分を多く含んでいるため、腐敗しやすい特徴があります。再生利用・熱回収が行えない場合は、「脱水」「乾燥」「発酵」「炭化」によって減量を行い、廃棄処分しやすいようにします。

減量に取り組む際に求められることとしては、次の2点が挙げられます。※10

  • 臭気漏れや排水の処理等生活環境に影響を与えないよう適切に処置する
  • 減量を行った産業廃棄物は、廃棄物処理法に従って処理する

地域食品資源循環ソリューションを活用して食品リサイクルを推進

食品残渣における課題解決に役立つのが、NTTビジネスソリューションズの「地域食品資源循環ソリューション」です。IoT等の情報通信技術を活用し、食品残渣から堆肥を生成して農家に提供するといった、食品資源が地域内で循環する仕組み「リサイクルコミュニティ」の実現をめざします。

地域食品資源循環ソリューションは、食品市場・食品加工工場・スーパーマーケット等を対象に、食品残渣を発酵分解床に分解するための食品残渣発酵分解装置「フォースターズ」(以下、フォースターズ)を設置します。食品残渣をフォースターズに投入・始動させれば、24時間後には分解が終了します。嫌な臭いもほとんど発生せず、店舗でも安心して設置できることから、再生利用等実施率が低い外食産業等とも相性が良いといえます。

フォースターズは処理量に応じて「100kg」「200kg」「300kg」「500kg」「1,000kg」「2,000kg」の6つのラインナップが用意されており、1日あたりの残渣量に合わせて選択可能です。

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出典:NTTビジネスソリューションズ「地域食品資源循環ソリューション

地域食品資源循環ソリューションでは、上図のとおり、堆肥を使用して栽培された野菜を市場や食品加工工場等に出荷し、店頭で販売します。地域食品資源循環ソリューションによって、食品の地域循環を生み出すことで、食品リサイクルの推進が可能となります。

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出典:NTTビジネスソリューションズ「地域食品資源循環ソリューション

上記は1,200tの生ごみを処理した際のコスト比較です。食品廃棄物をごみ焼却施設で焼却処理した場合、コストは年間5,400万円かかります。
一方、地域食品資源循環ソリューションのフォースターズを用いた場合のコストは2,880万円と、従来の焼却処理コストの約1/2ですみます。このように地域食品資源循環ソリューションは、食品残渣廃棄(食品廃棄物)の削減や地域経済の活性化だけでなく、生ごみの処理コストも削減することが可能です。

再生利用等実施率の向上のための施策事例

各企業は、再生利用等実施率の向上に向けてさまざまな取り組みをしていることでしょう。ここからは、地域食品資源循環ソリューションを活用した、再生利用等実施率の向上のための施策事例を紹介していきます。

外食産業における実施事例

外食産業における再生利用等実施率の向上のための施策実施事例としてA社の事例を見ていきましょう。A社はSDGsの達成、およびフードロス削減をテーマに掲げています。

SDGsの達成に向けては、使用済み廃油のリサイクルやプラスチックストローの廃止、レッドカップキャンペーン等、独自の施策に取り組んでいました。最優先テーマに掲げているフードロス削減では、発生を抑制することに着手し、食品の無駄をなくす、余ったサラダバーをお客さんに持ち帰ってもらうといった取り組みを実施しています。しかし、それでもお客さんの食べ残しや食品残渣は発生してしまい、廃棄するという問題を抱えていました。

そこで導入されたのが、地域食品資源循環ソリューションです。地域食品資源循環ソリューションの導入によって、食べ残しや残渣を堆肥化することで環境負荷の軽減に成功しました。

また、生成された堆肥は地域の農家に再利用してもらい、実際に作られた有機野菜をお店の会員が購入できる仕組みを構築しており、地域食品資源循環ソリューションを軸にして、フードロスを地域で循環させることをめざしています。

食品卸売業における実施事例

食品卸売業における再生利用等実施率の向上のための施策実施事例として、B社の事例を見ていきましょう。B社は、根菜等の生産・加工・販売を主軸としている食品会社です。

B社は根菜等を加工する過程で、皮等の残渣が大量発生するという課題を抱えていました。残渣量は年間200~250tにも及び、残渣をすべて食品廃棄物として回収してもらっていたものの、高い廃棄コストもかかっていました。

そこで導入されたのが、地域食品資源循環ソリューションです。加工工場内にフォースターズを設置したことで、従来かかっていた廃棄コストを20~30%削減することに成功しました。

また、B社はSDGsの指針でもある、障害者や外国人雇用にも積極的に取り組んでいます。フォースターズは、残渣を投入するだけで作業が完了するため、操作がシンプルで、誰でも簡単に扱えることも導入する決め手となりました。

まとめ

SDGsの高まりを受けて、再生利用等実施率向上や食品リサイクルの推進が世界中で注目されています。日本でも食品リサイクル法に基づいて、業種別に再生利用等実施率の目標値が設定され、企業は目標達成に向けた対応に追われています。

地域食品資源循環ソリューションを導入することで、食品リサイクル推進や廃棄コスト削減にも寄与できるものの、ただ、導入しただけでは、本当の意味でSDGsを推進したり、フードロスの地域循環を生み出すことはできません。地域食品資源循環ソリューションはあくまでも、SDGs推進やフードロスを地域で循環させるためのきっかけづくりにすぎないからです。

生成された堆肥で作られた有機野菜をお店の会員が購入できる仕組みを構築したA社様や、障害者や外国人でも簡単に作業できることから導入を決めたB社様のように、地域食品資源循環ソリューションをベースにどのように企業の課題・目的解決や地域貢献につながるかを考えていく必要があります。


参考資料一覧(ページ数は、参考文献内の表記に準じています)

  1. ※1 食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針
  2. ※2 食品リサイクル法に基づく基本方針
  3. ※3 令和2年度食品廃棄物等の年間発生量及び食品循環資源の再生利用等実施率(推計値)
  4. ※4 一般財団法人 食品産業センター:食品関連事業者のための環境情報
  5. ※5 一般財団法人 食品産業センター:発生を抑制する
  6. ※6 一般財団法人 食品産業センター:再生利用する
  7. ※7 日本の食料自給率
  8. ※8 登録再生利用事業者一覧表
  9. ※9 一般財団法人 食品産業センター:熱回収する
  10. ※10 一般財団法人 食品産業センター:減量する

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