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Bizナレッジ

ICTで経営課題の解決に役立つコラムを掲載

環境・エネルギー対策

食品関連企業が直面する食品廃棄の問題を解決

食品残渣リサイクルがもたらす処理コスト削減と循環型社会の実現

2019年7月発表の「食品リサイクル法に基づく新たな基本方針」では、サプライチェーン全体において、2030年度を目標に2000年度比で食品ロスを半減する目標が掲げられました。さらに、食品関連の業種別にリサイクル目標も設定されており、企業は目標達成に向けた対応に迫られています。

本稿では、食品関連企業の負担となっている食品残渣の処理コスト問題や、主なリサイクル手段と優先順位、リサイクルにおける課題について解説します。後半は、処理コスト課題の解決方法についても紹介します。

食品関連企業を悩ます食品残渣の処理コスト

食品関連企業は、食品工場や飲食店等フードチェーン上で生じる食品残渣量を削減する「食品ロス対策」が求められています。食品ロス対策は、大きく分けて「使い切る」と「リサイクル」の2点が挙げられます。

企業はまず食品廃棄物が出ないよう努力し、どうしても発生する廃棄物についてはリサイクルしなければなりません。リサイクル方法として、飼料化、堆肥化や肥料化、メタン化等による再利用が含まれます。

世界や国内で設定されている食品ロスの達成目標

食品ロス量の推移と削減目標

SDGsでは2030年までに「世界全体の一人あたりの食品廃棄を半減」させる目標が掲げられました。世界中で食品ロス対策への関心が高まっているのが現状です。

農林水産省が2022年に報告した「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢」※1によると、2020年度の国内食品関連企業による食品ロス量は275万トンでした。2030年度に273万トンまで削減する目標が設定されており、順調に推移しているといえます。

しかし、2020年はコロナ禍の時短営業や自粛で外食産業の来客数が減ったこと等が要因で、食品残渣量が減少したとも考えられます。今後、外食需要が回復したとしても食品残渣量を抑えられるよう、企業には継続した取り組みが求められます。

  1. ※1 出典:農林水産省「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢」を元に作成

食品残渣のリサイクルにおける達成目標

食品産業における再生利用等実施率の推移

食品残渣のリサイクルについて、2024年度までに達成すべき目標として業種別に「再生利用等実施率」※1が定められています。

2020年度の状況は、食品製造業は96%で既に目標を達成していますが、食品卸売業の68%、食品小売業の56%は、昨年度よりも上昇傾向ではあるものの目標におよばず、さらに最も目標と乖離しているのが外食産業の31%で、今後さらなる改善が必要とされています。

  1. ※1 出典:農林水産省「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢」を元に作成

食品残渣の処理にかかるコスト

食品残渣を廃棄する場合、当然ながら廃棄コストがかかります。外食産業の食品廃棄物を例に処理コストを試算してみましょう。

2020年度に外食産業で発生した食品ロス量81万トンを、事業系一般廃棄物で処理した場合、東京23区の処理手数料1kgあたり40円※2で計算すると、324億円の推計になります。処理手数料は自治体によって異なるため一概にはいえませんが、企業の負担額が非常に大きいことがわかります。

企業が効率的に食品残渣をリサイクルできれば、処理コストの抑制につながり、ひいては食品ロス対策にも寄与します。次からは食品リサイクルの現状や課題を掘り下げていきます。

  1. ※2 出典:東京23区「事業系一般廃棄物処理手数料の改定について

食品残渣のリサイクルにおける種類と優先順位

食品循環資源の再生利用手法と優先順位

食品リサイクル法では、リサイクルの手段として飼料化(エコフィード)、堆肥化や肥料化、きのこ菌床への活用、メタン化によるエネルギー利用等が挙げられています。これら4種類のリサイクルを促進すると、CO2が発生する環境負荷の高い焼却等の処理量を抑えることが可能とされています。

また、食品リサイクル法では、環境負荷の低減に配慮し、これらに優先順位※1がつけられています。まず、食品循環資源の豊富な栄養価を最も有効活用できる飼料化が最優先です。次いで堆肥化や肥料化、きのこ菌床への活用、メタン化等が続きます。

  1. ※1 出典:農林水産省「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢」を元に作成

飼料化(エコフィード)

飼料化は、食品残渣等を再利用して家畜用飼料を製造することでエコフィードとも呼ばれています。飼料化する方法として乾燥方式が主に使われ、乾燥方式には発酵、蒸煮、油温減圧式があります。

  • 発酵...微生物資材を入れて、高温で発酵して乾燥させる
  • 蒸煮...加圧蒸煮処理し、固形分は乾燥、液体分は油脂を抽出
  • 油温減圧...廃食油等で加熱し水分を蒸発させ、減圧する

もともと家畜飼料は輸入の依存度が高く、飼料自給率は低い状況です。エコフィードを活用すると、飼料自給率の向上や国産飼料による畜産経営が実現します。しかし、処理工程で異物混入が発生しやすく品質管理が難しい点が、デメリットです。

堆肥化や肥料化

堆肥化は、微生物で食品残渣を腐熟させることです。作られた堆肥は農家の土作りに活用されます。肥料化も同じく微生物発酵で作られますが、肥料は植物の栄養として使われる点が堆肥との違いです。

食品残渣を堆肥や肥料としてリサイクルすると、土壌が豊かになりおいしい農作物を育てられる点がメリットです。地域内で飲食店や農家、リサイクル事業者等が連携し、リサイクル活動で作られた農作物を飲食店で使用すると、循環型社会の実現に貢献します。

一方で、微生物で発酵させるための設備投資にコストがかかる点が、デメリットです。

きのこ菌床への活用

食品残渣をきのこ菌床へ活用するリサイクル方法があります。コーヒーや緑茶等の残渣を活用し、木材チップ等と混ぜ高湿度にした場所で、きのこを栽培する方法です。

きのこ菌床への活用は、ほかのリサイクル手法と比べて簡単に廃棄物を有効利用でき、新規参入のハードルは高くありません。しかし、収穫後の廃菌床は産業廃棄物となり、処理時にコストや環境負荷がかかります。

メタン化によるエネルギー利用等

食品廃棄物を細菌でメタン発酵させ、メタンガスを作りエネルギーとして再利用する方法です。食品廃棄物は、バイオガス発生量がほかの有機物と比較して多いのが特徴です。そのため、メタン化が向いているといわれています。

飼料化や堆肥化には不向きな分別の難しい食品廃棄物でも、メタン化であれば分別が粗くても問題なく処理できます。メタン化すると電気や熱に再利用でき、省エネルギーや分散型エネルギーの構築に貢献します。

しかし、設備導入や処理コストが高くなってしまう点がデメリットです。

食品残渣のリサイクルにおける課題

食品残渣のリサイクルにおける課題について、3点解説します。

事業者側のコストや供給体制

食品残渣のリサイクルには、事業者にコストがかかります。特に、飲食店等フードチェーンの下流では、分別に手間がかかるためコスト負担が重くのしかかる傾向があります。

さらに、食品工場の繁閑で食品残渣量が変わり、リサイクル後の堆肥等の供給が安定しないという課題もあります。

利用農家における活用技術

さまざまなリサイクル技術が検討されていますが、飼料化するエコフィードでは品質が安定しないケースが見られるのが、課題のひとつです。パンくず等質が均一の食料残渣が原料として利用できれば問題ありませんが、一般的に異物混入が起こりやすく安全面や衛生面に懸念が残ります。

また、食品残渣リサイクルで生成された飼料や堆肥について、農家側で活用のノウハウを蓄積することも重要です。飼料や堆肥に含まれる栄養成分は何に使用すると効果が高いか、農家は事業者と協力して知見を深めていく必要があります。

消費者のイメージや認知度

食品残渣や食品ロス対策は重要な社会的課題ですが、認知している消費者は一部に留まります。しかし、2020年における日本の食品ロス量は約522万トンで、そのうち家庭から約247万トンもの廃棄物が発生しています。

食品ロス対策は官民協力して取り組むべき課題であるため、認知を高めることは重要です。自社で取り組んでいる食品残渣の削減について発信すると、消費者意識が高まるだけでなく、企業のイメージアップにもつながります。

コスト課題の解決につながる「地域食品資源循環ソリューション」

食品残渣リサイクルの課題解決に役立つのが、NTTビジネスソリューションズの「地域食品資源循環ソリューション」です。リサイクル手法のうち堆肥化を活用することで、食品資源が地域内で循環する仕組み作りを支援しています。

こちらの動画では地域食品資源循環ソリューションの特長や仕組みをご覧いただくことができます。

事業施設内に設置された発酵分解装置「フォースターズ」に食品残渣を入れると、微生物によって発酵し堆肥になります。

一次発酵が終わるとリサイクルセンターへ堆肥が運ばれ、発酵を繰り返します。生成された堆肥は地域内の農家で土作りに使われ、できた農作物が市場やレストランへ運ばれる仕組みです。

食品残渣のリサイクルでは、事業者側のコスト負担が課題となっています。しかし「地域食品資源循環ソリューション」では事業者による大規模な設備投資は必要ありません。レンタル契約で初期費用がかからないため、食品残渣の廃棄コストを大きく削減できます。

なぜ「堆肥化」なのか

NTTビジネスソリューションズが複数ある食品残渣リサイクルの手法の中で、「堆肥化」にこだわるのには理由があります。それは「地域循環型社会」の実現に貢献したいからです。

工場やスーパー、レストラン等に設置された「フォースターズ」で生まれた堆肥は、地域内で消費される農作物の生産に活用されます。ほかの手法では対応できる残渣の種類やコストの問題で循環の輪が限定的になってしまうのです。

循環する資源量を増やすには、より多くの施設で使っていただく必要があります。「フォースターズ」は従来のコンポストでは分解が難しかった、調理残渣や肉等も分解できます。また、熱ではなく菌で発酵させるため腐敗臭が発生しにくいという特長もあります。そのため、工場やレストラン、スーパー等さまざまな施設に設置することが可能です。

対応できる残渣を増やしコストも抑えることで、より多くの企業がこの「地域循環型社会」へ参画していただけるソリューションとなっています。

まとめ

食品ロス対策として食品残渣の廃棄量を削減するには、廃棄そのものを出さない取り組みと、発生した廃棄物に対してはリサイクルに回す必要があります。しかし、食品残渣の処理やリサイクルのコストは、事業者に重くのしかかっているのが実状です。

NTTビジネスソリューションズが提供する「地域食品資源循環ソリューション」は、コスト負担を削減しながら食品残渣のリサイクルを実現します。

下記のリンクから詳細をご案内していますので、ぜひご覧ください。

関連リンク

地域食品資源循環ソリューション
https://www.nttbizsol.jp/service/foodwaste-recyclingsolution/

地域食品資源循環ソリューションに関するお問い合わせ
https://form.nttbizsol.jp/inquiry/foodwaste-recyclingsolution

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