ICTで経営課題の解決に役立つコラムを掲載
多様な働き方とバックオフィスのDXを実現するために
勤怠管理クラウドとは?
機能やメリット、失敗しない選び方を解説
勤怠管理クラウドとは、スマートフォン(以下、スマホ)で出退勤の打刻や、自動集計ができるシステム。クラウド型は導入コストを抑えられるため、採用する企業が増加しています。
勤怠管理とは従業員の出勤・退勤時間や残業など、勤務状況を管理するための業務です。多くの企業ではシステム化・データ化されていますが、まだ手作業や紙で管理している場合もあるでしょう。しかしそうした管理は法令違反などのリスクもはらみます。本稿では勤怠管理の必要性と、それを効率化する勤怠管理クラウドの主な機能や、失敗しない選び方について、わかりやすく解説します。
勤怠管理の必要性
勤怠管理が求められる主な理由は過重労働の防止とリスクマネジメントです。労働基準法ではフルタイムの労働時間は1日8時間、週に40時間と定められていますが、労使間で協定を結んだ場合に限り、残業や早出・休日出勤などの時間外労働が認められることになっています。
これは労働基準法36条に定められているため、36協定(さぶろくきょうてい)といわれます。ただし、36協定を結べば無制限に時間外労働をさせられるというわけではなく、法律によって上限が決まっています。この規定に違反した場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
労働基準監督署から「是正勧告」を受けた場合は、社名が公表される可能性があります(一定の基準があります)。勤怠管理をおざなりにすることは、企業のレピュテーションリスクを高めることにつながるのです。
勤怠管理における課題
また近年の働き方の多様化の影響もあり、勤怠管理にかかる手間が増え、経理や総務、人事といったバックオフィスの負荷増大やミスなども顕在化するようになりました。事実、freee株式会社が行ったインタビューでは勤怠管理の2大課題として「紙からの転記・集計の手間」「有給休暇・残業申請の手間」などの割合が圧倒的に多くなりました。
こうした背景から、限りある人員で勤怠管理を効率よく正確に行うために、ツール・システムの導入を検討している企業が増加しています。中でも勤怠管理クラウドの導入はこれらの勤怠管理の課題を解決するための手立てとして注目を集めています。
勤怠管理業務における課題には、紙からの転記や集計にかかる時間や、別管理の有給休暇、残業申請の処理が煩雑になる、などが挙がっている。
勤怠管理クラウドとは
勤怠管理クラウドとは、勤怠管理を効率よく正確に行うためのクラウドサービスです。先に述べたように、現在の勤怠管理は、コロナ禍以降、テレワーク、ハイブリッドワーク、短時間勤務、フレックスタイムなど、働き方が多様化していることにより、以前よりも複雑化しています。
その結果、勤怠管理にかかる手間が増え、経理や総務、人事といったバックオフィスの負荷増大やミスなども顕在化するようになっています。
勤怠管理クラウドは時間や場所によらずどこからでもアクセスでき、個々人ごとに異なる勤怠情報を自動集計してくれます。働き方が多様化した現代において非常に有益なツールといえるでしょう。
勤怠管理クラウドの主な機能
勤怠管理クラウドの主な機能について、詳しく解説します。
勤怠管理クラウドの主な機能 |
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多彩な打刻機能(PCやスマホ、Web、ICカード、指紋静脈認証など)
正確な勤怠管理は正確な打刻があってはじめて可能になります。毎日の打刻が正確にできることが勤怠管理クラウドの必須要件といってもよいでしょう。
したがって、どの勤怠管理クラウドも、従業員が簡単にかつ正確に打刻できるように工夫を凝らしています。
例えば、交通系のICカードをスマホにかざすだけで打刻と交通費精算が同時にできたり、PCやスマホからのクラウドサービスへのログインを打刻するなど、テレワークやハイブリッドワークにも配慮されたサービスが複数存在します。
また、指紋や静脈認証など、生体を用いた認証で打刻をするサービスも存在します。他の従業員が代わりに打刻するなどの不正利用を防止できるので勤怠管理の正確性が高まります。
リアルタイムで勤怠状況を確認できる
勤怠管理クラウドは集計がリアルタイムなのも大きな特徴です。アナログな勤怠管理方法の場合、集計は月に1回手作業で行うことが一般的です。月で締めないと勤務時間が具体的に把握できないため、過剰な時間外労働の実態把握が遅れてしまう可能性があります。
勤怠管理クラウドであれば、集計結果はダッシュボードにリアルタイムで可視化されます。全体の時間外労働が増加傾向にあるか減少傾向にあるかを分析しながら従業員の勤怠管理を把握できます。
シフト作成・管理機能など
勤怠管理の中で手間のかかる作業の一つがシフトの作成と管理です。従来は店舗責任者などの管理職がシフトの作成と管理を担っていました。しかし、各従業員にシフト希望を提出させExcelなどにまとめ、印刷して各従業員に配布。修正があれば再びExcelを修正し...といったアナログなやり方では、かなり煩雑です。管理職の負担も大きなものでした。
勤怠管理クラウドのなかには、シフト作成・管理を効率化する機能が付いている製品もあります。例えば、従業員はスマホから簡単な操作でシフト希望を提出すると、自動的に表に反映され、管理職も直感的な操作でシフトの調整を行えます。そして、シフト表が完成したらオンラインですぐに各従業員に配布できます。
管理する店舗が多い場合や、従業員が多い企業において非常に業務効率が高まります。
休暇/残業申請承認機能(ワークフロー)
テレワークやハイブリッドワークの導入において、課題になりやすいのがワークフローの効率化です。従来は社内でワークフローが完結していたため、アナログな紙の書類などでもさほど問題はありませんでした。
しかし、テレワークなどで遠隔地とのやり取りを行うようになると、紙の書類では時間がかかりすぎますし現実的ではありません。休暇や残業申請の手間の増加は、年次有給休暇の所得率の低下や、隠れた持ち帰り残業を誘発するリスクもあります。
勤怠管理クラウドはインターネットを介してどこからでもアクセスできます。ワークフローの申請・承認を勤怠クラウド内で完結できます。ワークフローを効率化することで適切な休暇取得、時間外労働申請を従業員に促します。
勤怠情報の自動集計
勤怠管理において特に効率が悪い作業の一つは手作業による集計作業です。勤怠管理クラウドでは従業員が入力した勤怠情報を、自動集計できるため、集計ミスがありません。集計が遅れてしまうこともありません。
集計結果は多くの場合、簡単な操作でレポート出力できます。集計作業やレポート作りなどの単純業務に時間をとられることがなくなります。
給与計算システムなど他システムとのデータ連携
勤怠管理クラウドは他のシステムとの連携機能も搭載している製品が多いです。例えば給与計算システムと連携し、集計した勤怠情報をそのまま給与情報へ反映します。
長時間労働や打刻漏れのアラート機能
勤怠管理の目的の一つは長時間労働の防止です。打刻が正確に行われなかったり、長時間労働の発生に気づかなかったりすると本末転倒になります。したがって、勤怠管理クラウドには長時間労働や、打刻漏れを管理職に知らせる機能が付いているサービスが多く存在します。
勤怠管理クラウドのメリット・デメリット
メリット
1.業務効率化
勤怠管理クラウドを導入するメリットの一つに業務効率化があります。コロナ禍以降、テレワークやハイブリッドワークが普及し働き方も多様化しました。それに伴い、勤怠管理やそれに伴う給与・交通費精算の業務も複雑化し、バックオフィスの業務負荷増大につながっています。
勤怠管理クラウドを導入することで、勤怠状況の集計やシフトの作成など、手間がかかる単純業務を効率化できます。
2.法令順守
勤怠管理クラウドの導入はコンプライアンスの強化とリスクマネジメントにも役立ちます。時間外労働時間は労働基準法によって厳格に規定されており、それに違反すると経営者が刑事罰を課される場合もあります。昨今の情報社会では、企業のよくない評判は瞬く間に広がりかねません。
このようなリスクを低減するためには、時間外労働の状況などをリアルタイムに把握するための環境が必要です。
勤怠管理クラウドの導入によって、勤怠管理の打刻・集計・分析・可視化が全て正確にリアルタイムに行われ、企業の法的・社会的リスクを低減できます。
デメリット
1.導入に負荷がかかることがある
勤怠管理クラウドを導入すると一時的に従業員の負荷が増大する場合があります。これは勤怠管理クラウドに限らず、新しい業務システムを導入したときや社内の制度を変更したときには起こりやすい現象です。
従業員にとって新しい勤怠管理クラウドは初めて使うシステムであり、また、仕事のプロセスを強制的に変更させられることでもあります。すでにルーチンワークになっている仕事であれば何も考えずにできますが、慣れないプロセスにストレスを感じる人もいるかもしれません。
勤怠管理クラウド導入の際には、従業員の負担を軽減できるように、ヘルプデスクの設置や、サポート体制が充実しているクラウドサービスを選ぶことなどが重要となるでしょう。
2.従業員が慣れるまで時間がかかる
勤怠管理クラウドを導入して従業員が慣れるまでにはそれなりに時間がかかると考えておくべきです。また、新しいシステムを使うのが億劫になってしまい、結局慣れているアナログなやり方で管理しているといった状況にならないように、社内のルールを根本から変える必要があるでしょう。
システムを業務に定着させることが重要なので、マニュアルの作成や社内研修の実施、個別にサポートできるヘルプデスクの設置なども行う必要があります。
勤怠管理クラウドの失敗しない選び方
勤怠管理クラウドにはさまざまなサービスが存在し、業種や業態によって合う合わないサービスがあります。自社に合うクラウドサービスを選ぶには以下の5点に留意しましょう。
自社にとって使いやすいシステムか
まず自社にとって使いやすいシステムでないといけません。それは従業員にとって使いやすいかということでもありますし、自社の業態やビジネスモデルに合うかということでもあります。
例えばシフト管理業務の負荷を低減させたい飲食業の会社において、テレワーク対応が主軸でシフト管理機能が弱いシステムを導入してもあまり効果は見込めません。
勤怠管理クラウドを導入する際には、自社の課題を洗い出した上でそれに対応できるシステムを選びましょう。従業員にとっての使いやすさを試したい場合は、無料トライアルがあるシステムを選ぶのも一つの方法です。
連携機能が充実しているか
勤怠管理クラウドを導入する際には連携機能は必ず調べましょう。自社で利用している他のシステムと全く連携できないサービスは選ぶべきではありません。バックオフィス全体のDXを推進するならば、経理や総務などで使用している他のシステムとデータ連携できる方が、効果が期待できるからです。
できれば、システム同士がAPIで連携し、自動的にデータを渡せるようなシステム体制が望ましいでしょう。特に、勤怠データを元にして行う給与計算や社会保険のシステムとの連携は必須ともいえます。
業界特化型
業界ごとに必要な勤怠管理の機能は異なります。自社の業界でどのようなシステムが一般的かを調査した上で選びましょう。例えば業界特化型の勤怠管理クラウドには以下のようなものがあります。
建設業界
現場に直行直帰して稼働する従業員が多いため、モバイルで手軽に打刻できるシステムが必要です。打刻に専用のデバイスが必要なシステムは現実的ではないでしょう。また、建設業界はいわゆる「ガラケー」を使う事業者が比較的多いのも特徴です。端末に耐久性があるので現場の従業員には根強い人気があります。建設業界で勤怠管理システムを導入する際には対応できる端末のタイプにも留意する必要があるでしょう。
医療・介護業界
医療・介護業界はシフト勤務が多い業界です。特に深夜勤務が多いのが特徴です。必然的に勤怠管理は複雑化します。また、医療業界は専門職が多く報酬体系が一般企業よりも複雑です。勤怠管理システムを導入する際には、それら医療・介護業界の独特な制度に対応できるものを選ぶ必要があるでしょう。
人材派遣業界
人材派遣業界のほとんどが現場や派遣先での勤務となります。しかも従業員ごとに派遣先の環境が異なります。したがって、自社の管理職が従業員の勤務実態を把握することが困難です。また、派遣先の企業で急な欠員が出た場合などに人員の追加を依頼される場合もあります。よって、リアルタイムに勤務実態やシフト状況を正確に把握でき、従業員への連絡が素早く取りやすいシステムを選ぶべきでしょう。
予算で選ぶ
勤怠管理クラウドは毎月利用料がかかるのが一般的です。料金体系は運営会社によって異なりますが、利用するユーザーの人数によって利用料金が変わるサービスが多いです。また、初期費用が必要なサービスもあります。
クラウドサービスは比較的安価に利用できますが、想定する予算でまかなえるのかどうかは対象人数などを含め、事前に検討した上で選びましょう。
サポート充実度
勤怠管理クラウドを選ぶ際に見落としがちなポイントが、サポート体制の充実度です。これは運営会社によってかなり異なりますので、しっかりと調べてから選びましょう。先述したように、勤怠管理クラウドを導入した直後は従業員の負荷増大や業務の混乱が予想されるためです。
サポートが無料なのか有料なのか、サポートに使うツールは何か、導入からサポートしてくれるのかなど運営会社によって変わりますので、自社にとってどこまでのサポートが必要か検討した上で選ぶのがおすすめです。
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