ICTで経営課題の解決に役立つコラムを掲載
働き方改革の実践例
法制度を活用した企業の取り組み事例を紹介

労働基準法の法令では、働き方改革に活用が可能な各種制度が設けられています。労働法令上の各種制度とICTを組み合わせれば、いっそう効率的に働き方改革を実現できるはずです。
法制度とICTをうまく活用して、働き方改革を成功させるためのアイデアを紹介します。
フレックスタイム制によって快適なテレワークを実現した事例
「フレックスタイム制」とは、労働者が始業・終業時刻を自由に決められる制度です(労働基準法32条の3、32条の4)。
勤務が義務付けられる「コアタイム」と、勤務が任意である「フレキシブルタイム」が設けられ、労働者はフレキシブルタイムの範囲内で始業・終業時刻を自由に決められます。
コアタイムを設けない「完全フレックスタイム制(フルフレックス)」を採用することも可能です。
フレックスタイム制の場合、労働時間は1日単位ではなく、「清算期間」を単位として管理されます。清算期間は最長3か月間まで認められており、労働者は幅のある働き方ができます。
フレックスタイム制を導入するには、会社と労働組合等の間で労使協定を締結し、そのルールを就業規則等に定める必要があります。
フレックスタイム制を取り入れたA社の事例をご紹介しましょう。
<事例1> しかし従業員の間で、オフィスで顔を合わせないのであれば勤務時間を揃える意味がないとの声が上がった。そこで社内で検討した結果、新たにフレックスタイム制の導入を決めた。 フレックスタイム制により、従業員は始業・終業時刻を自由に決められるようになった。各々の家庭環境や生活リズムに合った働き方ができるようになり、結果的に生産性が向上した。 |
フレックスタイム制はテレワークと相性の良い制度
従業員が労働時間を自由に決められるフレックスタイム制は、テレワークと親和性の高い制度といえます。
テレワークの場合、従業員同士がオフィスで顔を合わせるわけではないので、勤務時間を完全に揃える必要性は低いと考えられます。
また、フレックスタイム制とテレワークの相乗効果により、従業員はもっとも能力を発揮できる時間帯で仕事をすることが可能となり、生産性の向上が期待できます。
テレワークに馴染む職種については、フレックスタイム制にも適している可能性が高いので、導入について一考の価値ありといえるでしょう。
出生時育児休業を活用してキーパーソンの完全離脱を防いだ事例
「出生時育児休業」は、2022年10月1日に施行された改正育児・介護休業法によって新たに導入された制度です(同法9条の2)。
子どもの出生後8週間のうち、最長4週間(28日間)の出生時育児休業を、通常の育児休業(最長1年間)とは別に取得できます。女性の産後休業期間に相当する時期に男性が取得することを想定しているため、「産後パパ育休」とも呼ばれています。
キーパーソンの完全離脱を防いだB社の事例をご紹介しましょう。
<事例2> ある日、Xの妻の妊娠が判明。Xは育児休業の取得を希望していたが、多数の重要案件においてキーパーソンとなっているため、後任者へ業務を完全に引き継ぐのは非常に難しい状況だった。 そこでB社はXに対し、育児・介護休業法によって2022年10月1日から新たに設けられた「出生時育児休業」の利用を勧めた。 妻の出産後、Xは合計4週間の出生時育児休業を取得した。その間、Xは平日(労働日)のうち2時間に限り、チャットやビデオ通話を通じて同僚従業員からの質問を受け付ける時間を設けた。 |
出生時育児休業中は働くことも可能|ただしバランスに要注意
出生時育児休業の大きな特徴は、休業期間中に働くことができる点です。
労使協定によって指定された労働者に限り、以下の事項の申出があった場合には、会社はその範囲内で労働者を就業させることができます(育児・介護休業法9条の5)。
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休業期間中の就業日・就業時間帯等については、従業員側が範囲を指定できるので、育児と両立しながら勤務を継続することも可能です。会社側も、キーパーソンである従業員の完全離脱を防げるメリットがあります。
ただし、あまりにも勤務に偏り過ぎると、出生時育児休業を取得する意味がなくなってしまいます。会社としては、従業員の申出内容を踏まえつつ、就業日や就業時間帯を狭く限定した提案をすることが望ましいでしょう。
勤怠管理システムを通じて勤務間インターバルを実効的に確保した事例
勤務間インターバル制度は、1日の勤務終了から翌日の出社までの間に、一定以上の休息時間を設ける制度です※1。
労働者に十分な生活時間や睡眠時間を確保させ、ワークライフバランスを保ちながら働き続けられるようにする狙いがあります。
2019年4月1日に施行された改正・労働時間等設定改善法により、事業主には勤務間インターバル制度の導入の努力義務が課されています
勤怠管理システムを利用し、勤務間インターバルを実効的に確保したC社の事例を紹介しましょう。
<事例3> そこでC社は新たに「勤務間インターバル」制度を導入し、終業から始業までの時間を11時間以上確保することを義務付けた。 さらに、社内システムのログイン・ログアウト履歴を勤怠管理システムに紐づけ、従業員の実質的な勤務時間を漏れなく記録できるようにした。勤務間インターバルを正しく確保していない従業員に対しては警告メッセージを発し、度重なる場合は上司や人事部による改善指導を行った。 その結果、勤務間インターバルが実効的に確保され、従業員の生産性が向上した。休職する従業員の数も目に見えて減少したため、人手不足の問題が解消され、勤務間インターバルをいっそう確保しやすくなるという好循環もみられた。 |
勤務間インターバルを実効的に確保する方法
勤務間インターバルを実効的に確保するためには、従業員に対して制度の内容を周知するとともに、顧客や取引先への説明もしっかり行い、納得と配慮を得ることが大切です。
また、ICTを活用した勤怠管理の工夫として、以下のような設定を行うことが考えられます※2。
等 |
人的なコミュニケーションとICTによるシステム管理の両面から、適切な勤務間インターバルの確保に努めましょう。
勤怠管理を効率よく正確に行う勤怠管理クラウド
勤怠管理クラウドとは、勤怠管理を効率よく正確に行うためのクラウドサービスです。上述したように、新型コロナウイルス感染症の流行以降、テレワーク、フレックスタイム、ハイブリッドワーク、勤務間インターバルなど、働き方の多様化が進み、以前よりも複雑化しています。
勤怠管理に入力する従業員はもちろん、経理や総務、人事といったバックオフィスの負荷増大によりミスが増えることも懸念されます。
勤怠管理クラウドは時間や場所によらずにどこからでもアクセスができ、個々人ごとに異なる勤務情報を自動集計してくれます。
勤怠管理の必要性や主な機能、失敗しない選び方をまとめたこちらの記事もあわせてご覧ください。
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参考資料一覧(ページ数は、参考文献内の表記に準じています)
- ※1 厚生労働省東京労働局ウェブサイト「勤務間インターバル制度をご活用ください」
- ※2 厚生労働省「IT業種版 勤務間インターバル制度導入・運用マニュアル―職場の健康確保と生産性向上をめざして―」p51
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