ICTで経営課題の解決に役立つコラムを掲載
従業員の申告フローも電子化。計210時間の削減に成功。
年末調整の代行サービスとは?
業務委託する際の注意点や選び方を解説

年末調整は企業の担当者にとって負担のかかる業務の一つです。度重なる税制改正に応じた知識のアップデートも必要な上、紙の申告書を回収しチェックする手間等が生じます。業務負荷が高いものの短期で終わるので、引き継ぎや教育が難しい点も悩みの種。従業員にとっても年末の忙しい時期に申請書類を用意するのは面倒な作業といえます。そこで注目されているのが「年末調整代行サービス」です。本稿では年末調整代行サービスを選ぶ際の注意点や選び方について解説します。
年末調整における課題
年末調整にはさまざまな課題があります。主な課題は以下の3つです。
業務負荷が高く、スポット的に残業が増える
年末調整では書類の配布、回収、チェック、システムへの取り込みといった複数の工程が存在します。組織のメンバーが増えれば増えるほど、担当者の業務負荷も高くなります。
年末だけ短期的に業務量が増えるので、人員の増加や引き継ぎ・教育等がしにくく、既存の人員で残業を増やして対応せざるを得ないのです。
チェック作業が煩雑でミスが発生する
年末調整ではチェック作業が多いためミスが生じるリスクも高くなります。人員を補強しない場合、単純に業務量だけが増えるため疲労も蓄積しやすく、ケアレスミスも発生しやすくなるからです。
日本の税制は複雑でたびたび改正され、記入や計算、チェックの要件が前年から変わりやすいのも、ミスを誘発する原因となっています。
紙の書類が多くリモートワークに対応しきれていない
年末調整では申請書や控除証明書等の紙の書類を大量に扱わなければならない場合が多く、記入やチェック、転記に手間がかかります。リモートワーク時には郵送や出社しての提出も必要になります。
年末調整を電子化できれば大幅に工数を削減できますが、年に一度の短期の業務であることもあり、電子化はなかなか進んでいないのが現状です。
年末調整代行サービスとは
年末調整に関する課題の解決策の一つとなるのが、年末調整代行サービスです。年末調整代行サービスとは年末調整の回収や計算、チェック等の業務を社内の従業員に代わって外部が委託するサービスをいいます。
税理士事務所や士業法人がサービスを運営しているケースや、一般企業が運営しているケースもあります。
年末調整代行サービスを利用するメリット
年末調整代行サービスにはさまざまなメリットがあります。
従業員や担当者の業務負荷を大幅に削減できる
年末調整代行サービスのメリットは申請する従業員や、申請のチェックをする担当者の業務負荷を大幅に削減できる点です。
年末調整では書類の配布、回収、チェック、電子化等の工程があります。年末調整代行サービスではこれら全部または一部をアウトソーシングできるからです。
事業所や社員の情報を年末調整代行会社に送ると、調整対象の従業員への案内から申請の手続き、書類の回収、申請内容のチェック、電子化まで代行してくれます。代行を依頼した企業はできあがった電子データをシステムに入力するだけで申請に必要な作業のほとんどが完了します。
最も手間がかかると思われる書類のチェック作業を代行してくれるため、今までにその作業に使っていた時間を別の仕事に割り当てられます。残業や休日出社等が減ることで、従業員の業務過多によるストレスや不満も軽減できるでしょう。
社内の電子化を進められる
年末調整代行サービスでは、サービス内容の中に電子化まで含まれているサービスがあります。
電子化はクラウドサービスを使って行われます。たとえば今まで紙で郵送していた書類を、スマートフォンのカメラで撮影し、クラウドにアップロードするといった具合です。
クラウドに慣れていない従業員が多い企業の場合、ベンダーが導入や使い方のサポートまでしてくれることも多いです。年末調整を機に、社内の電子化が促進されるのも大きなメリットといえるでしょう。
年末調整を代行依頼・アウトソーシングする際の注意点
年末調整をアウトソーシングする際の注意点について解説します。
年末調整には税理士にしかできない業務がある
年末調整には税理士にしかできない業務(業務独占資格)があることに注意が必要です。税理士の独占業務として、税務の代理・税務書類の作成・税務相談の3つがあります。
年末調整も税務書類の作成や税務相談の中に入りますので、税理士以外が行うと税理士法違反になる場合があります。しかし、年末調整に必要な書類の配布・回収・チェックや記入済みの書類のデータ化等は、上で述べた3つの独占業務には該当しないため、税理士以外でも対応が可能です。
年末調整をアウトソーシングする際には、どの業務をアウトソーシングしたいかを明確にした上で、委託先を検討するとよいでしょう。
提出期限から逆算して業務委託先を選定する必要がある
年末調整は書類の提出期限が決まっているため、そこから逆算してスケジュールを立てる必要があります。委託先の選定もそれを踏まえて行わなければなりません。
年末調整の書類の提出期限は翌年の1月31日です。一般的に申請の準備は12月に行います。ほかの事業者の依頼も同じ時期に集中しますし、年末の直前になって委託先を選ぼうとしても、受託してもらえない場合があるかもしれません。
業務フローの決定や打ち合わせに必要な時間等を考えると、ある程度余裕を持って委託先を検討しておきたいものです。目安として半年前までには委託先候補へ相談しておくと安心です。
年末調整の業務委託先を選ぶ際の7つのポイント
年末調整の業務委託先を選ぶ際にはいくつかの注意点があります。ここでは委託先を選ぶ際のポイントについて解説します。
導入実績や効果
委託先を選ぶ際にはホームページやサービス資料等をチェックし、導入実績や実際の効果、導入企業の声等を確認しましょう。
年末調整は複雑な業務で専門知識も求められ、ミスが許されない業務です。導入実績がどれだけあるかによって委託先のスキル・信頼性をある程度把握できます。実際の効果がどれだけあったかにも注目しましょう。せっかく導入したのに逆に非効率になってしまっては意味がないためです。
申告内容のチェックや問い合わせ対応まで可能か
前述したように委託先によって対応できる業務範囲が異なります。たとえば委託先によっては、従業員への書類配布・回収やチェック、問い合わせ対応は自社でやらないといけない場合も考えられます。
自社がアウトソーシングしたい業務を明確にした上で、委託先がその業務に対応できるかを調べた上で選定しましょう。
従業員負担も軽減できる仕組みがあるか
年末調整を負担に感じるのは担当者だけではありません。申請書類に記入したり、必要な書類を集め提出したりする従業員自身も負担に感じます。委託先を選定する際には、従業員の負担を軽減できる仕組みがあるかも考慮に入れましょう。
たとえば紙ではなくスマートフォンとクラウドを活用した申請等が挙げられます。
問い合わせ対応のためのカスタマーサポートがあるか
導入後のサポート体制についても十分に検討した上で決定しましょう。とくに今までに紙の書類で申請していた会社が、クラウドへ移行する場合、操作方法等がわからない従業員が一定数発生すると思われます。
それらの対応をすべて担当者が行うというのは非常に骨が折れます。委託先によってはサポートのためのコールセンターが用意されているケースもあり、担当者の対応工数を大幅に削減可能です。
委託先選定の際には、従業員に対するサポートまでアウトソーシングできるのかを考慮して決定しましょう。
給与システムとのデータ連携の実績
アウトソーシングを利用して年末調整を効率化するためには、委託先の提供するシステムが自社の給与システムと連携できるかも大きな要素です。
委託先の提供するシステムから自社の給与計算システムへの入出力が連携できればよいですが、一つずつ手作業で入力し直しというのは現実的ではありません。
委託先選定の際には、自社の既存の給与システムとの連携が可能な仕様なのかを確認してから契約しましょう。
業務フローや導入範囲等のカスタマイズが可能か
自社の現在の業務フローに合わせて、利用するシステムやサービス内容をカスタマイズしたり、部分的な導入ができたりするのかも確認すべき点です。
自社の現在の業務フローを委託先のシステムに合わせて変更しなければならない場合には、慣れるまで時間がかかり、混乱の元になることもあります。できるだけ自社の既存の体制やプロセスは変更せずに、柔軟に合わせてくれる委託先を選ぶのが望ましいでしょう。
セキュリティー
年末調整は非常にセンシティブな個人情報を扱います。従業員の氏名年齢等の基本情報だけでなく、家族構成や収入額等も計算のために必要です。万が一にも情報の漏えい等あってはいけません。
委託先選定の場合はどの程度の強固なセキュリティー体制を有しているかも判断の基準にしましょう。
年末調整代行サービスの料金相場
委託先によって費用の違いはありますが、年末調整代行サービスの一般的な料金相場は社員1名あたり1,000円~3,000円程度です。
多くの委託先の料金体系は従業員数に応じて1名あたりの金額も変動し、基本料金によってもトータルのコストが変わってきます。検討の際には料金表の確認や見積を依頼するのがよいでしょう。
また、年末調整代行サービスは上手く機能すれば残業代の削減にもなるため、安易に金額の安さだけで選ばずに品質面や自社との相性も考慮して総合的に考えましょう。
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