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【イベントレポート】VUCAの時代を生き抜く!優秀な人材の定義と育成
変動と不確実性が常態化する現代社会においては、組織の真価を問われるのは「人」の力です。12月12日(火)に開催されたオンラインセミナー「VUCAの時代を生き抜く!優秀な人材の定義と育成」では、仲山考材の代表、楽天大学の学長を務める仲山進也氏と、T&Dコンサルティング代表の増子裕介氏をゲストに迎えそれぞれの経験を基にした基調講演とトークセッションを行いました。
本レポートでは、その様子をダイジェスト版でご紹介します。
【基調講演】これからの時代に求められる「優秀人材」~その定義と育成メソッド~
第1部では、株式会社T&Dコンサルティング代表取締役の増子裕介氏に「これからの時代に求められる「優秀人材」~その定義と育成メソッド~」というテーマで、基調講演をしていただきました。
増子 裕介 氏(株式会社T&Dコンサルティング代表取締役)
東京大学卒業後、株式会社電通に入社。約20年の営業生活を経て、新規人事プロジェクト等に参加。継続的に高い成果を上げている社員に共通する「能力」の見える化に成功。現在は人事コンサルティングの株式会社T&Dコンサルティングを立ち上げ、代表取締役として活躍中。著書に『ハイパフォーマー思考 高い成果を出し続ける人に共通する7つの思考・行動様式』など。
https://tandd-c.co.jp/
日本企業の人材育成システムは構造的な機能不全に陥っている!?
本日の講演は、「VUCAの時代における優秀な人材とは何か」という問いに焦点を当てます。この問いこそ、私が提供する人事ソリューションの根底にある課題認識だからです。
スイスのビジネススクール"IMD"が発表している「世界競争力年鑑」によると、1989年に日本は世界競争力ランキングで第1位でした。しかし、21年間の推移を追跡してみると、日本の順位は一貫して低下し、31位にまで落ち込みました。「失われた30年」と呼ばれる期間です。
また、一人当たりの生産性に関するデータも示唆に富んでいます。一人当たりGDPランキングを見ると、1990年から2000年までは上昇していましたが、その後は低下を続け、現在は24位となっています。特に、ドル建ての数値では、2000年の約4万ドルから2010年には若干増加したものの、現在は20年前の水準に戻ってしまいました。
これらのデータは、日本が国全体としても、一人当たりの生産性においても長期低下傾向にあることを示しています。しかし、これが日本人の能力の問題ではないことを裏付けるデータも存在します。
最近公表されたPISA(国際学力調査)の2022年データによると、81カ国が参加する中で科学的リテラシー2位、数学的リテラシー5位、読解力3位という好成績を挙げています。PISAは単なる知識ではなく、より深い思考能力を測定しているため、いわゆる「地頭」に近いものと考えて良いでしょう。
セミナー投影資料より
しかしながら、先述したIMDや一人あたりGDPのランキングに見られる通り、企業に入った後の生産性向上が十分に機能していないわけです。つまり、日本企業の人材育成システムが過去20年以上にわたり劣化し、構造的な機能不全に陥っていると考えられます。
スキルは「OS」と「アプリ」のように2階層で構成される
セミナー投影資料より
このセッションでは、「優秀な人材」が持つ能力について具体的に考察します。「能力」と聞くと、多くの方は特定の専門スキルを思い浮かべるのではないでしょうか。たとえば営業スキル、人事スキル、ITスキルなどです。これらは確かに重要ですが、実務において高いパフォーマンスを発揮するためには、これだけでは十分ではありません。
プレゼンテーション能力やコミュニケーション能力といった、部門や職種に関係なく必要とされる「ポータブルスキル」が備わっていてこそ、専門性が生きてくるのです。
例えば、コンピューターやスマートフォンにたとえるなら、特定の専門スキルは時代や会社の戦略によって変わるアプリケーションです。対して、ポータブルスキルは普遍的なOSにあたる役割を果たします。OSがしっかりしていれば、様々なアプリケーションが動作しますが、その逆は必ずしも成立しません。これを人材にあてはめると、特定の技術スキルがあっても、普遍的なポータブルスキルがなければ、能力を十分に発揮できないということになります。
また、アプリケーションは時間とともに陳腐化する可能性があるのに対し、OSは長期間にわたって基本構造が変化しにくいという特徴があります。
「OSの普遍性」を物語る好例として、私の古巣である電通の社員手帳には、1951年に制定された「鬼十則」が載っていました。(※現在は削除されている)。
セミナー投影資料より
例えば、「仕事は自分から創るべきであり、与えられるものではない」という基本姿勢や、「摩擦があってこそ進歩する」という考え方は、今の時代でも十分通用します。お読みいただければ分かる通り、この十項目はスキルではなく、仕事へのアプローチや心構えにフォーカスしているのです。
この例にみられる通り、「思考・行動」こそが高いパフォーマンスを挙げるための基盤となります。
陳腐化のリスクが避けられない専門スキルとは異なり、「思考・行動」は時代に左右されない普遍性を持つため、100年後や200年後であっても、優秀な人材の基本要件として通用するでしょう。
継続的に高い成果を上げる人材に共通する要素を抽出・言語化する「ハイパフォーマー分析」
ハイパフォーマーと呼ばれる人材は「OS=思考・行動様式」が優れているわけですが、その要素を抽出・言語化していく具体的なプロセスをご説明しましょう。
所定のプロセスを経て選ばれたハイパフォーマー一人ひとりに90分のデプスインタビューを行い、その内容を文字起こしし、重要なポイントをハイライトしています。各発言のエッセンスを要約し、ハイパフォーマー達に共通する思考・行動様式を抽出します。このようなプロセスを踏むことにより、特定の組織や会社において成果に結びつく、普遍性のある思考・行動が言語化されるのです。
セミナー投影資料より
本セミナーでは、「VUCAの時代における優秀な人材」に焦点を当てていますが、ここで「セカンドキャリアのハイパフォーマー」に関する研究データをご紹介しましょう。グーグルや電通、日立などの大企業を早期に退職し、新たな会社を設立したり、別の会社に転職して高い成果を上げている人々に共通する特徴的な思考・行動を抽出したもので、私の拙著『ハイパフォーマー思考』の元ネタとなったものです。
分析の結果、拙著で紹介している7つの思考・行動以外に、5つの思考・行動が抽出されました。たとえば、「自己の長所と短所を把握すること」や、「自分の軸を持つこと」などが「ハイパフォーマー思考」では紹介していないプラス要素です。
セミナー投影資料より
これらの思考・行動をより深く理解するためには、「正反対の悪い例」と比較対照することも有益です。例えば、「自分の長所は把握しているが、短所に目を向けていないのではないか?」、「新たな一歩を踏み出す前に"できない理由"ばかりを考えていないか?」といった視点で振り返りを行うことにより、自分自身や部下の課題を可視化できるのです。
ハイパフォーマー分析を行うことにより、その企業における「成果につながる思考・行動様式」が言語化され、それを全社員が共有することによって企業としての競争力が向上します。電通インドネシアでは、ハイパフォーマー分析に基づいて評価制度を全面的に見直した結果、クライアントの投票によって決まる「エージェンシー・オブ・ザ・イヤー」を初受賞することができました。
このアプローチは、実は極めてシンプルなロジックに基づいています。ハイパフォーマーが実践している特徴的な思考・行動様式を言語化し、いわゆる「6割の中間層」がそれを真似ることで、彼ら彼女らのパフォーマンスも向上し、結果として組織全体のパフォーマンスが高まるというわけです。
ハイパフォーマー分析は人事施策に一貫性をもたらす
セミナー投影資料より
ハイパフォーマー分析を行うことにより、言語化された「目指すべき人材像」からバックキャストする形で各種人事施策を連携させることが可能になります。このことにより、評価制度だけでなく、採用、配置、教育、異動など、部分最適に行われがちな施策がリンケージされ、人事機能全体がより効果的に機能します。
まず採用に関しては、入社後に変化しにくい項目を見極めます「コミュニケーション力」など、入社後に短期間で育成可能な能力は重視せず、「概念的能力」や「情熱」といった、資質に近い根源的な項目にフォーカスすることが重要です。
また、経験を通じて身につく項目に関しては、適切な配置やキャリアパスを通じて育成を図ります。そして、学習によって修得可能な項目は、研修などを通じてカバーします。
このように全体最適の視点で再構築された人事施策の連携を通じ、優秀な人材を計画的に育成することが可能となります。
視聴者からの質問
セミナーの中で視聴者から寄せられた質問に関して、増子氏よりご回答いただきました。
▼映像でご視聴になりたい方はコチラ
※本基調講演内で使用した引用・参考文献は以下の通りです
【基調講演】組織にいながら、自由に働く。 「組織のネコ」という働き方編
第2部では、仲山考材株式会社代表取締役/楽天グループ株式会社楽天大学学長である仲山進也氏に「組織にいながら、自由に働く。 「組織のネコ」という働き方編」というテーマで、基調講演をしていただきました。
仲山 進也 氏(仲山考材株式会社代表取締役/楽天グループ株式会社楽天大学学長)
慶應義塾大学卒業。シャープ株式会社を経て、創業期(社員約20名)の楽天株式会社に入社。2000年に楽天市場出店者の学び合いの場「楽天大学」を設立、人にフォーカスした本質的・普遍的な商売のフレームワークを伝えつつ、出店者コミュニティの醸成を手がける。
著書『「組織のネコ」という働き方』『アオアシに学ぶ「考える葦」の育ち方──カオスな環境に強い「頭のよさ」とは』『サッカーとビジネスのプロが明かす育成の本質』『組織にいながら、自由に働く。』『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則』ほか。
組織の動物には4タイプがある
今日は「組織のネコ」というテーマについて話します。「組織のイヌ」という表現がありますが、それならば「組織のネコ」がいてもいいのでは、ということで考えてみました。組織のネコとは、組織に属しながらも自由を重んじ、自分の意志を持って行動するタイプの人を指します。彼らは、上からの指示が適切でないと感じる場合、それをスルーすることもあります。
また、組織にはイヌとネコの他に、ライオンとトラも存在します。ライオンとイヌは組織の中央を志向し、ネコやトラは組織に属しながらも自由を志向します。ここでカギになるのが「自由」の意味合いです。
セミナー投影資料より
「自由」という言葉は、「わがまま放題、好き勝手に行動する」という意味合いで使われがちですが、組織でわがまま放題にすると仕事になりません。そこで、自由という言葉を再定義しようと思って自由の対義語を調べると、「拘束」「束縛」「強制」「統制」などの言葉が出てきました。でも、これらは「わがまま放題好き勝手」を抑え込む意味合いが強いので、新たな定義にはつながりません。
そこで次に訓読みしてみると、「自らに由(よ)る」と読めます。言い換えると「自分に理由がある」となります。「自分がやりたいと思える」とか、「自分でやる意味があると思える」というニュアンスです。これは使えると思いました。そうすると、対義語は「他人に理由がある【他由(たゆう)】」となります(造語)。「言われたからやっている状態」です。なお、組織にいるとほぼすべての仕事が上司からの指示で始まりますが、それを自分なりに解釈し、「自分に理由がある状態」できれば、それは他由スタートだったものを自由へ転換できたことになります。というわけで、「自由」という言葉は「自分に理由がある」という意味で使っていきます。
組織の4動物の相性
セミナー投影資料より
組織内の人々を動物に例えた「ライオン」「トラ」「イヌ」「ネコ」の相性について考えてみましょう。まず、ライオンとトラは人間(動物?)ができており、それぞれが異なる強みと価値基準を持っていることを理解しているので、お互いをリスペクトできる関係です。イヌはライオンに畏怖の念を抱き、ネコはトラに憧れる傾向があります。
イヌとネコの関係は、放っておくと軽蔑しあいがちになります。未熟なので、自分と異なる価値観に対する許容度が低いからです。イヌはネコに対して、「言われたことはちゃんとやろうよ」「統率を乱すのはやめようよ」と思っています。逆にネコはイヌに対して、「言われたことだけでなく価値あることをやろうよ」「上ばっかり見てタイヘンですね」などと思っています。
斜めの関係は対照度合いが高くなります。ライオンとネコの場合、ライオンは群れを統率する役割で、ネコは群れるのを好みません。ただ、ライオンは多様性の大切さを理解しているため、「ネコみたいなのがいてもいい」と思っています。
同じく斜めのイヌとトラは、最もこじらせやすい関係です。4象限の上が偉いということではないので、イヌが上司でトラが部下の場合もあります。そうすると、トラ部下の自由な行動はイヌ上司からまったく評価されなかったりします。
ルールとロール(役割り)の捉え方
セミナー投影資料より
動物4タイプの解像度をさらに上げるために、いくつかの切り口で比較してみます。
まず「ルール」のとらえ方。
ライオンタイプにとってのルールは、「群れを統率するために自分で作るもの」です。イヌタイプにとってのルールは「守るべきもの」。ネコタイプはルールでしばられることを嫌うので「息苦しいもの」と思っています。トラタイプは「自分やチームのパフォーマンス向上のための約束事」としてルールを作ります。なので、そのルールの賞味期限が切れたら新たなルールに変えていくのが当然だと思っています。
ルールの作り方において、ライオンとトラは「OBライン型」のアプローチを好みます。ゴルフのOB(アウトオブバウンズ)ラインのように、境界線の外側はNGだけれど内側であれば何をしてもよいというルールです。
それに対して、イヌタイプがルールを作ると「全員この制服を着てください」のように「正解一択型(指示型)」になる傾向があります。その制服(指示型)ルールに対して、ネコタイプは「制服じゃなくても、節度を守った範囲であれば自由でよくない? だからルールって嫌い」と思うわけです。
次に「役割(ロール)」のとらえ方。
ライオンタイプは、「長」がつく肩書きを持ちます。いわゆる従来の「組織のリーダー」そのものです。
イヌタイプは、昇進を目指して与えられた指示を忠実に実行します。
ネコタイプは、肩書きや昇進に対して興味が薄いので、人事考課の面談で「もっとがんばれば昇進できそうだぞ」と言われても「そういうのは興味ないので」と思いがち。
トラタイプは、名刺に書かれた肩書きからは想像できない多様な活動をしているため、自己紹介が苦手です。他者から「あの人、何をしているのかよく分からない」と言われがち。
3つ目に「失敗」のとらえ方。
イヌは失敗を恐れ、避けようとする傾向があります。一方で、ネコは失敗を恐れず、しばしば失敗します。トラもネコと同様に失敗を恐れませんが、失敗しないよう考え抜いた上で行動するので高打率。ライオンは失敗に対して指導や許しを与える立場です。
ネコが良くてイヌが悪いわけではない
この話題をすると、「イヌがダメでネコがいいのか」という質問をよく受けます。でも、そうではありません。よいのは「健やかなイヌとネコ」で、ダメなのは「こじらせたイヌとネコ」なのです。
ちなみに、「サラリーマンのトラ」のことを「トラリーマン」と呼ぶのですが、その名付け親はカリスマファンドマネージャーとして知られる藤野英人氏です。彼は、企業には「令和5年型」と「昭和98年型」の2タイプがある、と表現しています。賞味期限の切れた事業や組織のまま令和まできてしまっている「昭和98年型の企業」では、イヌもネコもこじらせた状況に陥りやすいでしょう。
そろそろ自分はイヌなのかネコなのか、というところが気になってきた方もいらっしゃると思います。というわけで「組織のネコ」度を診断する10項目のチェックリストがあります。
セミナー投影資料より
特に10番目の「同調圧力をかけるのもキライ」という点は、イヌとネコを区別する重要なポイントです。イヌは管理職になると「社長の指示だから」と言ってしまいがちなのに対して、ネコは自ら同調圧力をかけること自体を気持ち悪く思うので、メンバーが納得のいく説明をしたがります。
それぞれの強みに応じたバトンリレー
この動物4タイプの生息数を考えてみると、イヌが多数派で、トラはマイノリティといえます。自然な状態が半分ずつだとすると、ネコなのにイヌの皮をかぶっている人(隠れネコ)がたくさんいると思われます。
そうなった背景には、昭和時代の高度経済成長期の影響があります。大きな工場で役割を分担し、マニュアルに従った作業が重視されたため、ネコタイプの人々もイヌのように振る舞うことが求められました。それで会社も大きくなり、社員もハッピーになれたので、「働くことはイヌとして振る舞うこと」という考えが常識化したわけです。
しかし、その状況が変わって、正解のわからない、指示どおりに動いてもうまくいかない時代になりました。そのような状況では、「隠れネコ」が最初にこじらせ始めます。特に昭和98年型の会社で働いていると、もともとの自分の本性とは違う振る舞いをしているにも関わらず、言われたことをやっても結果が出ないので、「なんのためにやっているのかわからない」と悩みやすいからです。
このような環境では、ネコはイヌの皮を脱いで、ネコとして強みを発揮することが大事になります。新しい価値を生み出すのは、トラとネコの得意ジャンルです。彼らが試行錯誤を経て事業が軌道に乗ったところで、運用が得意なイヌがバトンを受け取るチームワークが成立すると、会社全体がうまくいきやすくなるのです。
セミナー投影資料より
成長期においては業務量が増えるので、オペレーションの効率化やマニュアルの策定が必要となります。ネコはマニュアル嫌いですが、それはイヌの得意技なのです。したがって、トラ・ネコがイヌにバトンを渡したあと(成熟期)は、既存事業から離れて新規事業の立ち上げに回るような役割分担ができると、全員が健やかに強みを発揮しやすくなります。
このようにチームビルディングの視点からは、それぞれのタイプの違いを理解し、仲良くやれるといい組織ができると考えています。
視聴者からの質問
セミナーの中で視聴者から寄せられた質問に関して、仲山氏よりご回答いただきました。
▼映像でご視聴になりたい方はコチラ
【トークセッション】VUCAの時代を生き抜く!優秀な人材の定義と育成
第3部では、モデレーターとしてNTTビジネスソリューションズで「キャリアナビゲーションtotoma」の開発を統括する成田佳郎が参画し、自身のHR系サービスの開発や人事部での経験も交えながらトークセッションを行いました。
成田 佳郎(NTTビジネスソリューションズ株式会社 バリューデザイン部 バリューインテグレーション部門 ソーシャルイノベーション担当 担当部長)
関西学院大学卒業後、日本電信電話株式会社に入社。関西エリアの人事育成マネージャーとして、約10,000名の社員に対する階層別育成を推進し、組織の活性化と同時に個人の成長を促進する取り組みを実践。現在はプロダクトマネージャーとしてHR系サービスの開発に取り組む。また、サービス開発分野においても、フレッツ光開発の新規PJ立上げから参画し、VPNサービスラインナップの拡充による企業向け光ネットワークビジネスの発展に貢献した実績を持つ。
キャリアナビゲーションtotoma
https://www.nttbizsol.jp/service/totoma/
「OS(思考・行動)」あってこその「アプリ(スキル)」
セミナー投影資料より
成田)
昨今のリスキリングはプログラミングなどのITの「テクニカルスキル」にフォーカスしたものがありがちなパターンになっています。しかし、実際にはやはりその「テクニカルスキル」を動かす「OS(思考・行動)」こそが重要であり、私も含めたミドルシニア層と呼ばれる人たちが活性化していない要因はここ(OS)にあると考えています。この点に関して、お二方の意見をお聞きしたいと思います。
「組織のトラの共通特性(仲山)」と「ハイパフォーマー思考(増子)」の共通点
セミナー投影資料より
増子)
今回の対談が実現した背景は2つありまして、1つめは仲山さんの著書『「組織のネコ」という働き方』で言及されている4つの動物で、自分の働き方はトラに近いと感じたこと。2つ目は仲山さんが定義している「組織のトラ」が、拙著『ハイパフォーマー思考 高い成果を出し続ける人に共通する7つの思考・行動様式』で提唱した優秀な人材(=ハイパフォーマー)の特徴と共通する点が多く、とりわけOSを重視するスタンスが同じだったことです。それまでお会いしたことがなかった仲山さんに私からメールをお送りし、実際に対談して内容を掘り下げていこうということになりました。
今回、仲山さん言うところの「トラ」と私が定義する「ハイパフォーマー」に共通する特徴や行動様式を比較対照してみました。その結果、二人の考えが一致している部分が多いと改めて実感しました。
ハイパフォーマーには自分の専門領域に留まるのではなく、本来の業務を超えた役割までカバーしようとする特徴があります。例えば広告会社で言えば、クリエイティブディレクターやコピーライターであっても、営業やメディアの仕事に関心を持ち、その道のプロと協働することを好むといったことです。
さらに、社外の人々とチームを組み、彼ら彼女らとのつながりを構築し、活動範囲を意図的に拡大しようとしています。これは一見、独立を好む「トラ・ネコ」のイメージと矛盾するようにも思えますが、「人との縁を大切にする人々」こそが、実は高いパフォーマンスを発揮しているのです。
VUCAの時代に求められる「サッカー型人材」
セミナー投影資料より
仲山)
現代のビジネス環境をOSとアプリケーションに例えると、昭和時代のOSは野球、令和時代のOSはサッカーに似ています。野球は安定した世界観のゲームであり、固定ポジション、ターン制の攻守、分業制の役割、監督の指示に従うことが特徴です。チームワークは、他の選手の邪魔をしないことが重要で、エラーは個人に記録されます。
一方、サッカーは流動的な展開、流動的なポジションが特徴で、他の部署で問題が発生した場合、選手はその部分をフォローする必要があります。チーム全体が一体となって動く必要があり、監督は存在しますが、プレーの流動性の高さから、すべての動きを指示することは不可能です。そのため、選手自身が状況を判断し、自律的に動くことが求められます。
三木谷さん(楽天グループ創設者の三木谷浩史氏)は、野球チームとサッカーチームの両方を運営した経験から、現代のビジネスは野球よりもサッカーに近いとの印象を持っています。
サッカーのルールでは、選手が最も器用に使える手を使用してはならないという制約があり、ミスは基本的に避けることはできません。ボールを奪われることをミスととらえると、サッカーはミスの連続であり、選手はどのようにして互いのミスをフォローし合うかが鍵です。この点で、不確実性や複雑性が高くてうまくいかないことが多くなる現代のVUCA時代は、サッカーのゲームに非常に近いと言えます。
令和のOSは「縄文2.0」
セミナー投影資料より
仲山)
対比のコンセプトとしてはもう一つ、「縄文OSと弥生OS」があります。
先ほどの野球型のような、指示命令で動く分業型の組織がいつ始まったのかを考えると、稲作が始まった弥生時代だと気づきました。稲作は、季節によって決まった作業が必要で、大量の作業を分担して行うことによって収穫量が最大化されます。このような状況では、指示を出す能力を持つ人が重要な役割を担うようになったと考えられます。
一方で、弥生時代の稲作が始まる前の縄文時代を振り返ると、その社会は基本的にフラットで、長老は存在してもボスではなく、知恵という強みを持つ人でした。狩猟採集したものはシェアされました。ほかのムラとも強みを活かした物々交換がなされていて、海があるムラの人が塩を持ってくるような。
その弥生OSの賞味期限が切れてきたことに加えて、インターネットの出現と技術革新によって、フラット・リンク・シェアという縄文時代の価値観が螺旋的に復活しているように思います。物理的に一緒にいなくても、興味関心の軸でつながるコミュニティが形成されたり、所有より共有するほうが豊かだと思えるような流れが生まれています。令和のOSは「縄文2.0」だと思っています。
成田)
お二人のご意見では、OSってこそのアプリ(=テクニカルスキル)であり、これまでの成功しているOSを時代に併せてアップデートしてくことがVUCAな時代がゆえに重要であるということが共通している点ですね。
人は「育つ」のか「育てる」のか
成田)
より重要なOSをどのように組織へインストールしていくのか?これから2つ目のテーマに入ります。
増子)
ゼロかイチかということではないかと思います。人は自分では育つし、外部からも育てるサポートはするのだろうけど、どうすれば成功率が高く、それができるのかという点を議論のポイントとして見ていくべきだと思います。
中間層の底上げが主眼となるべき
セミナー投影資料より
増子)
電通インドネシアが短期間で大きな成功を収めた理由は、ハイパフォーマー分析に基づく評価制度の導入にありました。評価制度を用いて、「成果に結びつく思考・行動」を半ば強制的に浸透させたわけです。これは最もハードなアプローチと言えますが、そこには課題も存在します。知識・スキルの習得は外部からの圧力によっても可能ですが、思考・行動が変わるためには当人の内発的な動機が不可欠です。
インドネシアは国民性が素直であり、日本に対するベーシックなリスペクトがあったため、このアプローチでも成功しました。しかし、日本の電通本体においては、人事評価という管理ツールに対して、従業員の反応は必ずしもポジティブではありません。そこで、ハイパフォーマーインタビューのフルテキストをイントラネットに掲出し、自由に読める形で提供するという極めてソフトなアプローチ手法を採りました。言わば「バーチャルOJT」としてハイパフォーマー達の肉声を読んでもらったわけです。
これまでの実務経験を通じて、「ハイパフォーマーが育つ条件」は
① 早い(若い)段階でハイパフォーマーに出会う
② 真似るべきポイントを言語化する
という2つであることが分かりました。
この事実を踏まえ、
・フルテキストのインタビュー原稿を通じてハイパフォーマーの肉声を紹介し
・その中から「注目すべきポイント」を抽出し
・複数のハイパフォーマーに共通する「真似るべきエッセンス」を提示する
という形で、この「ハイパフォーマーが育つ条件」を人為的に提供したわけです。
先に述べた「2つの条件」は理想ではありますが、残念ながら早い段階でハイパフォーマーに出会えない人も存在し、出会ったとしても「真似るべきポイント」を言語化できないケースもあります。そのような人であっても、ハイパフォーマー達の肉声に触れることにより、「2つの条件」に近い環境を手に入れることができるわけです。
念のためですが、これは大谷翔平氏やイチロー氏のような突出した存在を生み出そうというメソッドではありません。
・「3割5分打てるバッターを計画的に育成するのは不可能」と割り切り、
・安定的に3割5分打っているバッターに共通する要素を抽出し、
・2割5分のバッターがそれを真似ることで、
2割8分打てるようになることを目指す
というもので、目的はあくまで「中間層の底上げ」にあることを申し添えておきます。
みんなで学ぶ「実践コミュニティ」
セミナー投影資料より
仲山)
従来の学び方は、リーダーが知識や経験を増やし、正確に判断できるようになりつつ、人間力を高めていくというスタイルでした。
しかし、現代は状況が刻々と変化するので、チーム全員が同じものを見て同じ価値基準で同じ判断ができるようになることが重要です。
なので、学び方としてはみんなで同じことを学ぶ「実践的コミュニティ」型が効果的です。私が1999年に楽天に入社した時、インターネットショップの成功法則はまだ確立されていませんでした。当時は、店長さんたちも楽天スタッフも共に試行錯誤の中で学び合っていました。このプロセスを通じて、みんなが一緒に成長していったのです。
増子)
仲山さんの著書『アオアシに学ぶ「考える葦」の育ち方──カオスな環境に強い「頭のよさ」とは』を読むと、「優れた見本に触れ、そこから何を学ぶのかを自分で見つける」のがベストだという根本思想があると思っています。そこは全く否定するものではありませんが、「学ぶべきポイント」を自力では見つけられない人も多いという現実を踏まえ、補助輪を付けてあげることで、落ちこぼれなく全員が救われるのではないかと思いました。
コミュニケーションの「滝の法則」
成田)
現代では、リーダー自身がすべての答えを持っているわけではないという認識が広がっています。この「実践コミュニティ」のコンセプトでは、リーダーだけでなく、チーム全体が同じ情報を共有し、その情報を基に議論し、知見を深めることが強調されているようです。このような取組みをしてくことによって、チームは知識や知見を積み重ね、成長していくものなのでしょうか。うまくいく条件があれば教えてください。
仲山)
実践コミュニティをつくるときに大事な視点の一つは、セグメント化しすぎないことです。「売上を10倍にする方法を考える」ことをテーマに合宿をやっていたのですが、さまざまな商売ステージの店長さんが集まって、2泊3日で盛り上がりました。その後、月商1,000万を超える人たちが増えたときに、「それ以上の店長だけで合宿をやりたい」とリクエストがあったのでやってみた際に、全く盛り上がらなかったことがありました。
なぜかというと、ステージがバラバラなときは上の人がが下の人に対して「自分はこんなことをやった」みたいな話を自然とするのですが、一定のレベルを超えた人同士が集まると、「自分がやっていることなんて他の人も当然にやっているだろう」と思ってしまい、自分から話すという行動が起こりにくくなったのでした。そこから、高低差があった方が「教えるコミュニケーション」は発生しやすくなるのだなと気づいて、「滝の法則」と呼ぶようになりました。
視聴者からの質問
セミナーの中で視聴者から寄せられた質問に関して、ゲストよりご回答いただきました。
質問集はコチラ
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※冒頭数分間、音声の乱れがございます。申し訳ございません。
NTTーBSのスキル可視化サービス「キャリアナビゲーションtotoma」
ハイパフォーマーに共通するのは優れた思考・行動様式。それらの要素を言語化すれば、優秀な人材育成に役立つ。
人材の育成において、人材にどんな要件を求めるための「言語化」と「ギャップの明確化」は必要不可欠な要素です。「スキルにフォーカスした人材管理のためのHRプラットフォームサービスであるキャリアナビゲーションtotoma」は、市場で求められる職種別スキルを詳細まで言語化した「ジョブディスクリプション」を活用し、ポジション別のスキル要件と社員一人ひとりの現状スキルを可視化して一貫した人材育成へと繋げます。
関連リンク:https://www.nttbizsol.jp/service/totoma/
まとめ
左より、成田氏、増子氏、仲山氏、MC工藤(NTT-BS) ※登壇者の役職はセミナー実施日当時のものになります。
今回のレポートでは、12月12日(火)に開催されたオンラインセミナー「VUCAの時代を生き抜く!優秀な人材の定義と育成」の内容をダイジェストでご紹介しました。NTTビジネスソリューションズでは、こうしたセミナーを定期的に開催し、ICTを用いた経営課題の解決に役立つ情報発信をおこなっております。ぜひ、今後のセミナー情報もチェックしてみてください。
関連リンク:https://www.nttbizsol.jp/event/
関連リンク
キャリアナビゲーションtotoma
https://www.nttbizsol.jp/service/totoma/
キャリアナビゲーションtotomaに関するお問い合わせ
https://form.nttbizsol.jp/inquiry/totoma
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