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【イベントレポート・前編】人事部必見!勘と経験に頼らない科学的採用メソッド
「採用」は、企業の成功を左右する鍵の一つであり、とりわけ長期雇用がメインの日本では、新卒採用を中心とした効果的な人材獲得が重要な課題となっています。NTTビジネスソリューションズでは、新卒採用活動が本格化する前の2024年2月25日(木)に、オンラインセミナー「人事部必見!勘と経験に頼らない科学的採用メソッド」開催しました。
T&Dコンサルティング代表の増子裕介氏をゲストに迎え、採用を成功させるために欠かせない科学的メソッドを、基調講演とトークセッションの2本立てで深掘りしました。
イベントレポート前編では、第1部で実施した基調講演の内容をダイジェストでご紹介します。
【基調講演】勘と経験に頼らない科学的採用メソッド
第1部では、株式会社T&Dコンサルティング代表取締役の増子裕介氏に「勘と経験に頼らない科学的採用メソッド」というテーマで、基調講演をしていただきました。
増子 裕介 氏(株式会社T&Dコンサルティング代表取締役)
東京大学卒業後、株式会社電通に入社。約20年の営業生活を経て、新規人事プロジェクト等に参加。継続的に高い成果を上げている社員に共通する「能力」の見える化に成功。現在は人事コンサルティングの株式会社T&Dコンサルティングを立ち上げ、代表取締役として活躍中。著書に『ハイパフォーマー思考 高い成果を出し続ける人に共通する7つの思考・行動様式』など。
https://tandd-c.co.jp/
「変わりやすい能力」にフォーカスした採用は不合理
日本企業が選考にあたって重視する点として「コミュニケーション力」が、長らくダントツの1位になっています(経団連調べ)。
「コミュニケーション能力を重視する」ということを否定はしませんが、「選考時に重視する要素として妥当なのか?」ということからお話したいと思います。
アメリカの心理学者が膨大なサンプルを分析し、「変わりやすい能力」と「変わりにくい能力」があることを調査したデータがあります。
表の左側にあるのが「簡単に変化する能力」、右側にあるのが「非常に変わりにくい能力」で、真ん中が「可変的だが変わりにくい能力」です。
セミナー投影資料より
ご覧の通り「コミュニケーション能力」は左側、つまり「簡単に変化する能力」に分類されており、社会人として求められるレベルのコミュニケーション力を身に着けることは実は簡単なのです。
当社では「コミュニケーション力」に特化したトレーニングも提供していますが、半日程度の研修で十分能力を向上させることができており、「コミュニケーション力」は極めて変わりやすい能力であり、短期間で伸びる能力だと思っています。
アバウトに「コミュニケーション」という単語でまとめるからおかしくなるのであって、「○○と、○○と、○○ができればコミュニケーション力がある」というように能力を因数分解し、各項目を一つずつ習得していけば、コミュニケーション力を身に着けることはさほど難しくないということです。
この事実を踏まえると、選考時にコミュニケーション力に着目するというアプローチの根拠が揺らいできますね。入社してから鍛えればいい能力であるのに、「わかりやすいから」というような理由で最重視することは果たして妥当なのでしょうか。
一方で「変わりにくい能力」が右側に分類されているものです。「知能」、「創造性」、「概念的能力」など、確かに変わりにくそうですよね。例えば「創造性(クリエイティビティ)」というのは入社後に育成するのが難しく、高度なクリエイティビティであれば特にそうでしょう。
この変わりにくい能力を選考時に重点的にチェックした方が、「入社後に伸びる人材」を選びやすくなるのではないかということです。
第一印象で判断することは優秀な人材の採用を逃すことになる!?
問題を更に深刻にしているのは、殆どの会社が「コミュニケーション力とは何か」を厳密に定義できていないという事実です。「何をもって"コミュニケーション力がある"と判断しているのか」を尋ねると、
①受け答えがしっかりしている
②表情と声が明るい
③ハキハキ喋る
④気持ちの良いやりとりができた
などが代表的な答えとして挙がってきますが、どれもコミュニケーション力というスキルの本質とは言い難い要素です。
「④」は特に問題があります。面接官は20分から30分程度の時間を通じて「しかるべき能力を見極める」という立場であるにもかかわらず、「自分の感覚による基準」で評価してしまっているからです。元々の定義が曖昧であるため、面接官が気持ち良く会話ができた相手を後付けで、「コミュニケーション力があった」と判断しているという滑稽なプロセスになってしまっているわけです。
服部泰宏さんが書かれた「採用学」という本では次のように述べられています。
求職者の中には、初対面の人とでも堂々と話をすることができ、相手に対して自分の能力を雄弁に語ることができる人がいる一方で、初めのうちは緊張してしまったり、相手に気を使ってしまったりして、なかなか自分の良さを相手に伝えられない人もいるだろう。
(中略)
研究者たちが調べたところ、大半の面接では、全体で数十分間の面接であったとしても、開始4分くらいの間に、面接官の多くが採用/不採用の決定を下してしまっているという。
「能力を正確に判断するきちんとした物差し」を持たなければ第一印象で選んでしまい、「能力が高い/低い」とは関係なく、「初めのうちは緊張しているが、実は優秀な人」を数分、下手をすると数秒で落としてしまうことになるのです。
細分化された定義を効果的に活用することで「コミュニケーション力」は後天的に伸ばせる
自著『ハイパフォーマー思考』でも触れた通り、私は国内外の様々な企業や団体にいる「継続的かつ安定的に高い成果を上げている人=ハイパフォーマー」を分析してきました。本では「思考・行動」にフォーカスしましたが、ハイパフォーマーに共通するスキルも存在します。
国内外のハイパフォーマー1000人以上にインタビューし、「コミュニケーション力が高い人」が実践していることを分析したところ、次の9つが抽出されました。
セミナー投影資料より
この9項目を意識して数日間練習すれば、ある程度のレベルまで到達することは十分可能です。先日も某クライアントの新卒社員に対して半日程度の研修を行い、コミュニケーション力を飛躍的に向上させることができました。
こうした正確な定義なしに「コミュニケーション力」重視の採用を行うと、先ほどお話した「初めのうちは緊張しているが、実は優秀な人」を不採用にするようなことになってしまいます。
その派生形で、「一緒に働きたいと思った人を採れ」というフレーズをよく耳にしますが、こちらも非常にまずい採用方法です。
なぜなら「一緒に働きたい」というのは、個々の面接官の主観でしかないからです。
「一緒に働きたい人を採れ」というのは、「あなたの主観で自由に採っていい」と言っているのと同じです。誰にも人の好き嫌いはあるので、「自由にしていい」と言われれば、自分の判断基準で人に順位をつけることになってしまいます。
先ほども紹介した服部泰宏さんの「採用学」には、次のような記述があります。
多くの場合、面接の主眼は、求職者と面接官との言語のやりとりを通じて、その求職者の能力を見極めていくことにある。
(中略)
しかし、実際の面接では、求職者の「身振り」「アイコンタクト」「表情」「服装」「容姿」「化粧」といった、公式には本来の採用条件となっていない部分が、面接官の評価に対して影響を与えることがわかっている。
このような事態を防ぐために、明確な評価基準を決めておくことが極めて重要です。「コミュニケーション力」という単語で済ませてしまったり「一緒に働きたい人を採れ」というコンセプトで採用を行うことはギャンブルに近いということを認識しましょう。
「構造化面接」が入社後のパフォーマンスを決める
では、どうすれば採用の成功率を高められるのか。
「採用時の評価」と「入社後のパフォーマンス」との相関係数をアメリカの心理学者が研究したデータがあります。
多くの企業が取り入れているのが「非構造化面接」と言われるもので、自己PRや志望動機を聞いて、その流れで「好きなスポーツは何ですか」など、フリートークのような質問をし、その反応を評価をしていく方法で、0.38という相関係数が出ています。
一方、私が推奨する「構造化面接」の相関係数は0.51であり、統計学的に言っても有意に高くなっています。
構造化面接を端的に言うと次の通りです。
- フリートークではなく、「何を話し」「何を聞くか」を厳密にマニュアル化し
- 全ての候補者に、同じ質問を決まった順番で行い
- 「回答をどのような基準で評価するか」を定めた評価基準に則って採点し
- 根拠のない「総合的判断」などを行わずに合否を決定すること
最後の「総合的判断」というプロセスを加えたがる企業をよく見ますが、これには注意が必要です。明確な根拠があればいいのですが、折角これまで点数を積み上げてきたのに、最後に「総合的な判断」でひっくり返してしまってはそこまでのプロセスに意味がなくなってしまいます。フィギュアスケートでいえば、「トリプルアクセルならプラス★点」、「着氷が乱れたからマイナス★点」といった形で採点をしてきたのに、終了後に「総合的には☆☆の勝ち」というようなことをやっているようなものです。
構造化面接の方法
では構造化面接をどのように実施するのかについてシンプルにご説明します。
セミナー投影資料より
例えばこの赤字のチェックポイントを面接で評価したいとしましょう。
「挑戦意欲」「粘り強さ」「ストレス耐性」の3つをチェックしたいとするならば、次のような流れで質問していきます。
【挑戦意欲】
面接官:今までの人生で最も達成感があったことを教えてください。
学生:高校の野球部で甲子園を目指したことです。
面接官:なぜそれに取り組むことになったのですか?
といった形で質問をし、「どういう目標を設定してきたのか」を徹底的に深掘りしていくということですね。
「粘り強さ・ストレス耐性」に関しても「達成に向けてどのような困難がありましたか?」といった質問を行っていきます。
このように見ていくと、誰でも普通にできる面接ですよね。大切なのは、この3つをどういう評価基準で見ていくかを事前に定義しておくということです。
セミナー投影資料より
例えば「挑戦意欲」に関して、先述の甲子園を目指した高校球児を例として考えてみましょう。その人が甲子園常連の名門高校出身であれば、自分の意志が強く反映されているものではないので、真ん中の「自らの意志ではく、成り行きや外部からの強制で高い目標を設定している」と判断し、「△」をつけます。
一方、超進学校で今まで甲子園に出たことがないのに、何とかして出場しようという目標を設定したならば、「自らの意思で高い目標を設定している」に該当し、「〇」をつけるといった形になります。もちろん数学のような厳密さを求めるのは難しいですが、このような明確な基準を設定しておけば、「×」か「△」か「〇」かを客観的にジャッジできるので、面接官による判断のブレが生じにくくなります。
見極め項目を決めるだけではなく、どのような回答なら「×」「△」「〇」なのかを前もって決めておくことによってブレを防ぐことがポイントで、これこそが構造化面接の肝ということになります。
3億の投資である「採用」を勘や経験に頼って行うべきではない
セミナー投影資料より
なぜこのようなことを申し上げているかというと、新卒で一人採用して定年まで雇い続けると、およそ3億円の投資になるという統計があるからです。
投影資料にあります通り、4大卒の男性を雇って60歳まで勤続した場合、2.92億円ですから約3億円となります。10名雇えば30億、100名雇えば300億の投資ですよね。
例えば3億円のM&A案件を「何かピンと来たんだよな」とか「この会社と一緒になれば何かいいと思ったんだよな」といったいい加減な根拠で実施するでしょうか。「どういう人を雇えば会社の将来的な成長につながるのか」をきちんと考え、その要素を見極めるための面接やグループワークを設計していく必要があるのです。
そういったプロセスを踏まなければ、私が全面的に否定しているところの「勘と経験に頼った採用」になり、結果として、入社後のパフォーマンスが芳しくなかったり、早期離職につながったりするわけです。
せっかく多くの人の時間とエネルギーをかけるのであれば、「科学的根拠に基づいた、成功率が高い」採用プロセスにしていくことが必要であると申し上げて講演をクローズさせていただきます。
▼フルの映像でご視聴になりたい方はコチラ
※本基調講演内で使用した引用・参考文献は以下の通りです
Q&A
セミナーのお申込み時、当日のチャット欄で募集した質問と回答を一部ご紹介します。
ご質問いただいた参加者のみなさま、誠にありがとうございました。
Q)
採用時の説明や、採用後のフォローアップもできる限り行っているつもりですが、なかなか長期の就業につながらないのですが、どのようにすればよいでしょうか。
A)
正確にお答えするためには、状況を細かく伺う必要がありますが、一般論として「採用時には入社してほしいために良いことばかりを伝えてネガティブなことは隠しがち」になります。実は私の古巣でもあったのですが、ある年の新入社員で早期離職が多発しました。採用段階でポジティブな情報を多めに発信するのは構わないので、内定期間の6ヶ月を活用して適切な情報発信を行いながら、上振れしがちな会社への期待値を実態に近づけていくのがいいのではないでしょうか。電通でもうまくいきましたし、汎用性の高いノウハウだと思います。細かい話を含めて個別のご事情などもお聴ききできれば、もっと解像度の高い回答ができると思います。
Q)
入社後のキャリアのミスマッチを防止、もしくはミスマッチが起きた時にどのような対処ができるでしょうか。ミスマッチの例としては、「やりたいと思って入社したことが実際にはできない」「社内に尊敬できる人がいない」などです。
A)
なかなか回答が難しいですね。「尊敬できない人がいない」ということに関しては、会社の規模にもよりますが、自分の周り以外にも視点を広げてみると良いのではないでしょうか。別のセクションには尊敬できる人がいるかもしれないので、一つの方法ではないかと思います。
「やりたいと思って入社したことが実際にはできない」ということに関しては、まずは目の前の仕事をちょっとでもやってみるのがいいと思います。おっさんぽい回答になりますが、私自身を振り返っても、20歳そこそこの人間が自分に合っている仕事を客観的に判断できているかというと大いに疑問です。例えば法務部なら法務、人事部なら人事といったテクニカルスキルよりも、どのセクションでも必要なコミュニケーション力や交渉力、プレゼン力といったポータブルスキルを磨くことの方が重要だと思うので、まずは今の部署でポータブルスキルを習得しながら業務に取り組み、どうしても合わない場合は社内でのFA制度等を使えばいいと思います。
それでも「まずはやってみる」というのは重要であると思います。私も「人事に向いている」というのは実際に異動して初めて分かったことです。ちょっと無責任かもしれないですが、経験を踏まえて本音でそう思います。
NTT-BSのスキル可視化サービス「キャリアナビゲーションtotoma」
採用において、人材に求める要素の「言語化」と「ギャップの明確化」は必要不可欠なステップです。「スキルにフォーカスした人材管理のためのHRプラットフォームサービスであるキャリアナビゲーションtotoma」は、市場で求められる職種別スキルを詳細まで言語化した「ジョブディスクリプション」を活用し、ポジション別のスキル要件と社員一人ひとりの現状スキルを可視化して一貫した人事業務へと繋げます。
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- スキル診断の結果と目指すレベルとのギャップを可視化
- スキル向上に向けた個人別のアドバイスコメントを記載
スキル向上につながるリスキリングプログラム
- 個人のスキルレベルに合わせたプログラムやコンテンツをレコメンド
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まとめ
今回のレポートでは、2024年2月15日(木)に開催したオンラインセミナー「人事部必見!勘と経験に頼らない科学的採用メソッド」の内容をダイジェストでご紹介しました。NTTビジネスソリューションズでは、こうしたセミナーを定期的に開催し、ICTを用いた経営課題の解決に役立つ情報発信をおこなっております。ぜひ、今後のセミナー情報もチェックしてみてください。
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