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Bizナレッジ

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生産性向上

生産性向上の手段として注目の「RPA」
どこまでの仕事がロボットでできる?効果は?

工場だけでなく飲食店で料理を運んだり、公共施設等で案内係をするロボットが登場しています。

活躍の幅を広げているロボットですが、近年注目されているのが「RPA」による業務改善です。
RPAとは人間にしかできないと考えられていたパソコン作業等の事務業務をAIやロボットによって自動化する取り組みのことです。
ついにオフィスワークにもロボットが登場する、と考えるとわかりやすいでしょう。

では、RPAではどのような事務作業が可能で、企業ではどのくらい生産性が向上するのでしょうか。
事例を含めてご紹介します。

RPAが登場した背景

RPA(=Robotic Process Automation)とは、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのレスリー・ウィルコック教授らが命名したもので、以下のように定義されています※1

「従来は人間のみが行うことができると考えられていた作業を代行するもので、高度化するソフトウェア、およびそれらを利用した業務改革手法」と定義されるとする

さらにウィルコック教授らは、RPAの仕組みを、「パソコン上で人間が行っているさまざまな操作をロボットが記憶し、人間に代わって自動で実行すると説明できる」と指摘しています。

つまり、ホワイトカラー部門にもロボットが進出する時代といえます。

野村総研の2015年の研究結果では、10年から20年後には、日本の労働人口の約49%が、技術的にはAIやロボットで代替可能になると発表しています。(図1)。

人工知能やロボット等による代替可能性が高い労働人口の割合(日本、英国、米国の比較)

図1:AIやロボット等での代替可能性が高い労働人口

以下を参考に図を作成しています。
(出所:「日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に」野村総合研究所)

「人工知能やロボット等による代替可能性が高い 100 種の職業」として挙げられているのは体を使う製造作業だけでなく、各種の事務やデータ入力の仕事も含まれています。

「工場のオートメーション化で人間の仕事を軽減できる」ことについては実感があるかもしれません。
「事務仕事をロボットに任せる」のがRPAですが、人手不足を抱える中小企業の間でもRPAという言葉への認知度は6割にのぼっています(図2)。

ITキーワード別の認知率と活用率

図2 ITキーワードの認知率・活用率

以下を参考に図を作成しています。
(出所:「平成30年 中小企業白書」中小企業庁)

ただ、その活用はほとんど進んでいないのが現状です。

RPAで可能な業務範囲

では、RPAではどこまでの業務が可能なのでしょうか。

総務省によれば、RPAでは以下の業務がロボットやAIによって可能だとしています※2

  • キーボードやマウス等、パソコン画面操作の自動化
  • ディスプレイ画面の文字、図形、色の判別
  • 別システムのアプリケーション間のデータの受け渡し
  • 社内システムと業務アプリケーションのデータ連携
  • 業種、職種等に合わせた柔軟なカスタマイズ
  • 条件分岐設定やAI等による適切なエラー処理と自動応答
  • 業種、職種等に合わせた柔軟なカスタマイズ
  • アプリケーションの起動や終了
  • スケジュールの設定と自動実行
  • 蓄積されたデータの整理や分析
  • プログラミングによらない業務手順の設定

具体的な適用業務としては、帳簿入力や伝票作成、ダイレクトメールの発送業務、経費チェック、顧客データの管理、ERP(基幹システム)、SFA(営業支援システム)へのデータ入力、定期的な情報収集等、主に事務職の人たちが携わる定型業務です。

RPAの導入事例

RPAでは、ロボットは入力という単純作業においてはミスをしない、大量のデータ処理を短時間でできる、また、ロボットは疲れない、という特徴があります。
導入事例としては、中小企業白書で以下のようなケースが紹介されています。

業務効率化で売上を2.5倍に

まず、東京都内で保育士などの人材紹介等を手がけている企業の場合です※3

サービスに登録した保育士に対し、希望する勤務地や待遇等をアドバイザーが尋ね、合致する求人情報があれば求人先の保育園や幼稚園などを紹介する業務を展開しています。
しかし、登録者の希望に合致する企業がなかった場合は希望条件にあった施設を抽出し、個人が特定されない程度の求職者情報をFAXで複数施設に一斉送信し、施設からの問い合わせを経て面接等につなげています。

問題は、この抽出作業に人手がかかっていたことです。

抽出には数十項目の条件設定が必要で、FAX送信1件につき5~15分程度の時間がかかっていました。この作業は事務員1名で行っていましたが、その事務員は単純かつ大量の定型作業にやりがいを見いだせず退職してしまい、社長自らが担当することになったのです。

社長としては現場の人手不足を補うために始めた業務ですが、これによって社長は本来業務や退社後等も含め、1日4時間以上の時間を割かなければならないという深刻な状況に陥ってしまいました。

RPAの導入で、1件あたり平均10分の時間を要していた抽出作業を自動化したことにより、作業の正確性が増し、さらにこれまで抽出業務に割かれていた4時間を、本来業務に充てることが可能になりました。

これまで時間を捻出できずに見送っていた、各グループ責任者との定期ミーティングが実現する等、働き方が変わり、導入後、売上高は2.5倍に増加しました。

優先度をデータ化、社員の残業時間を圧縮

次に、岡山県の醤油製造会社のケースです※4
この会社では中国・四国地方の顧客を35人ほどの営業担当者が月1回のペースで直接訪問する「御用聞き」が、売上の8割を占めていました。

社長は入社後から電子手帳を活用し、詳細な顧客情報や購入履歴等のデータベース化に取り組んできました。社長就任後も従業員の残業時間を減らす業務改善を実施してきましたが、実際のきめ細やかな営業活動となると、顧客情報の管理等に時間がかかってしまい、社員の退社時間が遅くなるという課題を抱えたままでした。
課題を解決するために導入したのは、コールセンターで電話をかけるべき顧客を自動抽出する機能を実装したRPAです。さらに毎日の営業訪問先リストの自動作成に着手しました。
アポイントメントの頻度等、顧客の優先順位を数値に置き換える取り組みを進め、その数値を基に「御連絡必要度」という新指標を自動計算させたのです。

これにより、営業活動は効率化されることになります。
導入前と導入後の1年間を比較すると、社員の残業時間を1人あたり月3時間6分短縮することに成功しています。

従業員のモチベーション向上にも繋がるRPA

両社に共通しているのは「従業員のモチベーション向上につながった」点です。
先に紹介した1つめの企業では実際に事務作業を担当していた従業員が辞職したという事情もありました。また、2つめの企業でも、訪問先が絞られる上、購入履歴についても携帯端末ですぐに確認できるようになったため、顧客と親密に会話する時間が増え、売上とモチベーション向上に貢献しています。

「かなり時間がかかるけれど、この作業にどんな意味があるんだろう?」そう疑問を抱いてしまう作業の連続では、従業員のモチベーションは下がってしまうでしょう。

RPAの導入は人手不足の解消だけでなく、従業員のモチベーションを維持し、離職防止にも繋がるのです。

  1. ※1 「RPA と事務改善活動についての論点の整理」財務省
  2. ※2 「RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上)」総務省
  3. ※3 「平成30年 中小企業白書」中小企業庁
  4. ※4 「RPAの導入により定型業務を自動化し、残業時間短縮を実現した企業」中小企業庁

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