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Bizナレッジ

ICTで経営課題の解決に役立つコラムを掲載

快適なオフィスの実現

コンタクトセンターに蓄積された“顧客の声”、活用できていますか?

顧客ロイヤルティを高める「VOCデータ」という一手

転載元:ITmedia ビジネスオンライン
ITmedia ビジネスオンライン 2022年7月5日掲載記事より転載、本記事はITmedia ビジネスオンラインより許諾を得て掲載しています。

現在はSNSやWebサイトの充実により、顧客は自ら大量の情報を取りに行くことができる。つまり、「代わりの商品やサービスはすぐに見つかる」「一度でも対応に不満があればいつでも乗り換えられる」という、サービス提供者側からするとシビアな状況だ。デジタルシフトが今後ますます進むと考えられる中で、顧客体験(CX)向上に努め、再購入比率や継続利用率を高めるためにはどうすればいいのか? CXのプロ集団に聞いた。


 「CX向上」の機運が、各社で高まっている。CXとは、Customer Experienceの略称で「顧客体験」を意味する。顧客の消費行動は、この10年ほどで大きく変わった。スマートフォンやSNSの影響でネットの利用が進み、もはやオンラインで買えないものは存在しない世界が訪れた。最近ではコロナ禍の影響もあり、デジタルシフトが一気に加速。この現象は、不可逆であると捉えるべきだろう。

 一方で企業も、店舗や電話のみではなく、チャット、メール、SNSなどデジタルチャネルを拡充。問い合わせに素早く対応すると同時に、顧客が自ら課題解決を図れるよう、Webサイト上の情報を増やすなどしてCX向上に努めている。しかし、デジタルチャネルを拡充したり、情報を充実させたりするだけで、果たして本当に顧客の体験価値は上げられるのだろうか。

対応チャネルは増えても――顧客インサイトを正確に捉えられているか?

 「時代に合わせ、企業が用意するチャネルは拡張傾向にある。しかし、『どうすれば課題解決ができるのか』という顧客が求める回答に対し、各チャネルを生かして的確に応えられているケースは少ない」。そう話すのは、コンタクトセンター運用を軸に営業支援からVOCデータ分析、CXコンサルティングまで幅広い「CXデザインソリューション」を提供するNTTマーケティングアクトProCXの米林敏幸氏だ。

 例えば、Webサイト上で欲しい情報が得られなかった。そのためチャットに問い合わせたが、Webサイト以上の回答を得られなかった――これでは、顧客は課題を解決できない。

 実際に、「デジタルチャネルが増えても、コンタクトセンターへのコールニーズは減っていない」と米林氏は話す。コールのうち約7割は、他チャネルで課題解決ができなかった顧客からの問い合わせだ。情報や問い合わせ手段だけ提供しても、それが顧客の課題を解決できるものでなければ、CX向上どころか離反につながることもある。

 同社の辻井拓也氏は、「チャネルを拡張させるだけではなく、統一的かつ顧客の課題を的確に捉えた対応力が求められる。そのためにも、コンタクトセンターに集まるVOC(顧客の声)データをどう生かすかが重要だ」と話す。

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NTTマーケティングアクトProCXでCXソリューション部のシニアプロデューサーを務める米林敏幸氏

部門横断で「顧客の声」に耳を傾ける

 また、CX向上のためには部門間の連携強化も重要だ。マーケティングやセールス、カスタマーサービスなどが、与えられたKPIをそれぞれに追っていても本質的な課題――例えば顧客インサイトを捉えてCXをデザインし、収益向上につなげるといった、企業の経営課題に貢献できているとは限らない。

 KPIだけを追うのではなく、KPIと、部門間でまたがる共通のKGI(最終目標、重要目標達成指標)をつなげること。そして目標達成のために、顧客のリアルな声や課題解決のナレッジが集まるコンタクトセンターを軸として、部門横断でVOCデータを活用していくこと。今、企業が取り組むべきは、「コンタクトセンターをCXの戦略拠点に進化させる」ことだ。

顧客ロイヤルティはどう高める? 「推薦者」を生み出すためには

 そのためにも、顧客視点のコンタクトセンター運用体制の構築は欠かせない。

 辻井氏は、「以前より日本のコンタクトセンターでは応答率を重視する傾向にある」という。「電話をしたらつながる」ことが最重要であり、結果それが顧客満足につながるという考えからだ。もちろん顧客が課題を抱え、それを解消するための最終手段がコンタクトセンターへのコールであることを考えれば、応答率を軽んじることはできない。しかし、CX向上を目指す上では「同時に、顧客ロイヤルティ指標を重視した上で運用することが一番の肝である」と、辻井氏は説く。

 顧客ロイヤルティとは、顧客がサービスを越え、それを提供する企業へ寄せる信頼や愛着そのものを指す。顧客ロイヤルティを高めることができれば、再購入比率や継続利用率が高まるだけではなく、消費者やユーザーが「推奨者」へ転換することで新たな顧客を呼び込む――というサイクルが生まれる。

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米林氏と同部門に所属。チーフプロデューサーを務める辻井拓也氏

 推奨者を生み出すために重要なのは、顧客がつまずくポイント「痛点」を正確に捉え、"先回り"して支援することだ。誰かがつまずいた場所では、他の誰かも同じようにつまずくかもしれない。しかし、それを先回りすることで解決策を提案できれば、満足度は上がり、顧客ロイヤルティも高まる。これは、ただマニュアルを用意して、画一的な対応をするだけのコンタクトセンター運用では実現できない。

 とはいえ顧客の「感情」に基づく行動は数値化が困難であり、把握しづらい領域である。Webサイトへのアクセス数といった行動履歴は数字で可視化できる。性別や年齢、リピート率といった顧客情報もCRMで管理可能だ。しかし「なぜ困っているのか」「なぜ改善を望んでいるのか」といったVOCを正確に捉え、サービス開発等に生かすことは今まで難しかった。

 辻井氏は、「受けたコール内容をその都度、時間をかけて事細かに記録することは極めて難しい。多くの企業は、コンタクトセンターが持つVOCの価値を理解しているが、どうすればいいのか答えを見いだせないのが実態だ」と話す。

課題整理から改善サポートまで VOC分析&活用のノウハウ

 NTTマーケティングアクトProCXは、企業と顧客の多様なタッチポイントを網羅し、適したコミュニケーション施策を提案・展開することで、CX視点のコンタクトセンター運用を担っている。コンタクトセンター運用の受託にとどまらず、デジタルマーケティング、バックオフィス業務のBPOまでサービス領域は広いが、一番の強みは「VOCの活用」におけるノウハウだ。

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同社が提供する「CXデザイン」ソリューションマップ

 同社では、VOC分析に特化した専門センターを独自に用意。センターには、コンタクトセンターの知識と経験を有したアナリストやコンサルタントが在籍し、企業から集めた音声、メール、チャットといったVOCデータをAIで分析・アウトプットしているという。

 ポイントは、VOCデータを受け取り、分析し、結果を渡すだけの一方通行なサービスではないという点。これについて辻井氏は、「CX向上を目指す上でどのような課題があり、どういったVOC分析を行うことで何を実現したいのか。課題整理からゴール定義を明確にした上で、支援を行う。分析後も、効果検証や改善サポートまでトータルで伴走することで、コンタクトセンター運用だけではなく、マーケティングやサービス開発に至るまでクライアントと足並みをそろえ実施していく」と話す。

 VOCを読み解き、顧客の顕在・潜在的な課題解決を図るためには、ただデータを集めてセグメントを分ければいいというわけではない。同社では、VOCを「コンタクトリーズン(顧客がコールする理由)」に基づき分析をする。例えば、「パスワードを忘れた」という問い合わせには、チャットでスピーディな回答を提示する方が満足度は高いと考えられる。しかし、「自分に合うプランが知りたい」という問い合わせは「一緒に考えてほしい」という要望を含んでいると予想できる。そのため、オペレーターが対応し顧客に寄り添うことで、最適解に導ける可能性が高まる。

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ただVOCデータを集め分析するだけではなく、多角的な支援で伴走する

 「企業にとっての価値(効率化など)と、顧客にとっての価値(求める解決策)を2軸にし、コンタクトリーズンでマッピングする。これにより、人手で対応するのか、セルフ解決を促すのか、またはクロスで対応するべきなのかといった問い合わせチャネルの適正化を図れる。各チャネルに適した活用が進み、かつ顧客がサイレントカスタマーになることなく企業とつながれるような仕組みづくりを、コンサルティングとオペレーションをセットにしてご提供している」(米林氏)

品質管理マネジメントをDX基盤で EXとCXのシナジーを生む

 同社では、話す速度や抑揚、間合いの取り方など、顧客と対話するオペレーターの品質管理サービスも手厚く用意する。

 オペレーターの応対品質管理は、「コンタクトセンター長年の課題」(辻井氏)だ。突発的なトラブルが起きれば、その都度、管理者であるスーパーバイザー(SV)が解決することはできる。しかし、「なぜトラブルが起きたのか」根本的な解決に直結する応対品質を、より良い状態で均質に保つのは簡単ではない。

 「各オペレーターの全コール内容をモニタリングして日々指導することは難しい。モニタリング結果をフィードバックできたとしても場合によっては2~3カ月に一度などになり、数カ月で離職するオペレーターに関しては『一度も指導できなかった』ということもある」(辻井氏)

 同社ではこういった課題に対し、マネジメントDX基盤「ONE CONTACT Quality Management」を提供する。これは、AI技術を用いて、全コールを対象とした品質管理を徹底できるものだ。従来、品質管理のデジタル化といえば、音声をテキスト化することで「発話しているか」などを評価するのみであった。しかしONE CONTACT Quality Managementでは、従来人の耳で聞かないと判断できない「抑揚」「感情」などを音素分析・感情分析機能によってデータ化。基本スキル、コミュニケーション、CXマインドといったテーマ別に計27項目もの評価に分け、品質を数値化できる。

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ONE CONTACT Quality Managementでは、NTTマーケティングアクトProCX社が培ってきた品質管理のノウハウによる重要指標とルール、加えて5万件もの汎用的学習データを基に公平な評価をAIで行う

 ONE CONTACT Quality Managementの最も大きな価値は、「体系的なコーチングができる」ようになることで、「EX(Employee Experience:従業員体験)」向上を果たせることだ。明確な指標に基づいた評価は公平性が担保され、被評価者の納得感を得やすい。結果として、EX向上につながりオペレーターの改善意欲も高まる。

 米林氏は、「EXとCXは切り離せない関係にある」と話す。

 「従業員が、働く意義を見いだし、仕事に対してやりがいを持ち続ければより良いカスタマーサービスへとつながる。EXが高まればCX向上につながり、その結果を得てまたEXが高まるという好循環サイクルを生み出せる。ONE CONTACT Quality Managementは、品質管理に対する課題解決のためだけではなく、事業成長へとつながる企業文化醸成のためにも重要な役割を担っている」

パフォーマンスとクオリティ NTT西日本グループで実現する徹底した品質管理

 なお、ONE CONTACT Quality Managementは、NTTグループ統一のビジネスブランド「ONE CONTACT」に属するサービスとしてリリースされた。両社はコンタクトセンター事業において、NTTビジネスソリューションズがシステム基盤を、NTTマーケティングアクトProCXが運用サービスを担い、連携しながら開発に取り組んでいる。

 「コンタクトセンター運用には欠かせない、応答率や即応率といったパフォーマンス面のプロセスデータは、システム基盤で正確に取得ができる。そこにONE CONTACT Quality Managementが加わることで、パフォーマンスだけではなくクオリティも定量化して管理可能となる。双方のKPIを連動管理し、確実性の高い品質管理基盤を構築できることは、NTTグループならではの強みだ」(辻井氏)

企業、エンドユーザー、従業員――全ての人に「Wow!」体験を

 NTTマーケティングアクトProCXでは、このようなCX向上への取り組みがいかに経営貢献できているのかを可視化するためにCX3.0®のフレームワークを活用している。それが以下の図だ。

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このような「改善による利益の創出」という考え方は根付いていない企業が多いと米林氏は話す。しかし「取り組み始めているリーディングカンパニーもまた、少なくない」ともいい、価値創出のためのコンタクトセンター変革へ乗り出す企業は今後増えていくだろう

 トラブル体験の有無、トラブルがあった際に問い合わせたか、その結果カスタマーサービス対応はどうであったか。これらCXを可視化することで、顧客ロイヤルティやディスロイヤルティ(非愛着心)を算出。想定顧客数、LTV(顧客生涯価値)を掛け合わせることで損失リスク「逸失利益」を計算できるというが、CX向上に取り組み顧客ロイヤルティを高めれば「10億円以上の逸失利益確保につながることも珍しくない」(米林氏)。

 事例としては、VOC分析により今まで見えなかった潜在的な顧客ニーズをキャッチし、ターゲットに合わせた広告配信や新商品開発といったマーケティング施策の改善を実現できたコスメブランドがある。ほか、インサイドセールス(アウトバウンド業務)を同社に委託したビジネス向け通信機器販売企業は、EXとCXの2軸で体験価値を高めた結果、キーマン接触率25%増、アポイントメント率2倍という成果を出している。

 米林氏は「幅広いニーズに応えられるコンタクトセンター運用を通し、クライアントだけではなく社会の課題解決にも取り組んでいる」と話し、こう続ける。

 「コロナ禍になり、非対面による顧客対応が重要視される中で、コンタクトセンターは不可欠な存在として見直されつつある。クレーム対応やテクニカルサポートだけではなく、購入の意思決定を左右する部門として、求められる仕事の質は今後も高まり続けるだろう。コンタクトセンターは人で成り立つビジネスであり、今まで労働集約型とされることが多かったが、価値を創出するプロフィットセンターへ進化するためには『人とデジタルを融合させる』ことが引き続き最重要課題となるはずだ。

 一方で、コロナ禍の影響により働き方にも変化が求められる今、従業員の労働環境見直しも喫緊の課題だ。NTTグループでは、オペレーターの在宅化促進をNTTビジネスソリューションズが提供するシステム基盤『ONE CONTACT Network』で担い、就労条件や環境の改善といった運用ルールをNTTマーケティングアクトProCXで担うことで、時代背景を捉えたワークスタイルを推進している。育児・介護と仕事を両立できるロケーションや勤務時間の選択、年齢にとらわれず有スキル者の雇用を拡大するなど、ONE CONTACT Quality Managementによる育成や評価を含めて運用面を刷新することで、EXとCX向上の好循環創出、そして課題解決力の進化と深化を目指す」

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 同社のパーパスは「and Wow!」。マーケティング業界では、顧客に「ワオ!」と言わせるような価値を提供するという意味で「Wow体験」という言葉が用いられるが、同社では「and」を付け、従業員やチームごとにMyパーパスを持っているという。デジタルツールやデータ、そして社内制度もただあるだけでは生かせない。重要なのは、目的意識(パーパス)を持って活用することだ。

 コンタクトセンター運用を軸に、多角的に「体験価値」を向上するNTTグループの「CXデザイン」。ぜひ一度、その効果を体験してみてはいかがだろうか。

関連リンク

ITメディア
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2206/24/news001.html

AQStage IPコールセンタサービス
https://www.nttbizsol.jp/service/ipcall/

NTTマーケティングアクトProCX
https://www.nttactprocx.com/

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