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【実施報告】AIを活用したDE&Iの新たな取り組みと人的資本開示への可能性

NTTビジネスソリューションズは、2025年2月13日(木)に「AIを活用したDE&Iの新たな取り組みと人的資本開示への可能性」を開催し、NTT西日本でESG推進を担当する甲斐氏、MS&ADインターリスク総研で人的資本経営・開示支援のコンサルティングを担当する金田氏をゲストに迎え、DE&I分野での人的資本開示の関係性やAI活用の可能性について、語っていただきました。

お伝えしたポイント

  • NTT西日本グループの風土醸成に向けた取り組み
  • 「アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)」へのアプローチ
  • DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)のデータ開示の重要性
  • データを活用した組織課題の可視化と改善アプローチ

DE&I推進に向けてのNTT西日本の取り組み

NTT西日本グループでは、「違いを価値として一人ひとりが自分らしくチャレンジできる会社づくり」をビジョンに掲げ、組織風土改革を推進されています。甲斐氏より、現場での実践を通して得られた気づきや、制度をどう活用し、どのように社員の意識変容へとつなげているのかをご紹介いただきました。

制度から風土への定着をめざして

同社では、育児や介護との両立支援、リモートワーク制度などがすでに整備されており、それを活かす組織風土の形成に力を入れています。
具体的には、社員一人ひとりの行動や意識が変わるよう、継続的な発信と対話を重ねているとのことです。

トップのメッセージと社員の自律的行動の両立

経営層が直接登壇して、従業員からの率直な質疑に答える対話イベントや、社内動画でのメッセージ発信、役員へのインタビューなどを通じ、透明性のある職場づくりを進めています。
また、「社内ダブルワーク制度」により、社員が本業の枠を超えて自らの課題意識や興味に基づいた活動に参画できる環境も整えられています。

アンコンシャスバイアスへの具体的対応

無意識の思い込みが職場の不平等感や働きづらさにつながることへの認識を広めるため、社員の体験に基づいたエピソード共有やセミナー開催を継続的に行っています。とくに上司の発言や態度が部下のキャリア形成に与える影響を丁寧に扱うことで、具体的な気づきと改善行動が促進されています。

データに基づいた課題可視化とAI活用の取り組み

社内のエンゲージメント調査では、「誰もが能力を発揮できると感じているか」という問いに対して肯定的に回答した社員が35%にとどまるなど、実際の心理的安全性に課題が残っていることが明らかになりました。このような課題に対して、NTT西日本ではAIを活用した管理職向けトレーニングツール「karafuru AI(カラフルAI)」を開発・導入しています。
このツールでは、実際の会話に近いシチュエーションを通して上司の応答を入力すると、アンコンシャスバイアス発言の有無、傾聴・共感、ポジティブフィードバック、問題解決の提案や指摘の4軸でAIがフィードバックを提供します。さらに、専門家監修によるアドバイスや解説もあり、現場での行動変容に直結する支援が可能です。

ツール利用者のうち、行動変容につながったと答えた人が7割、継続利用したいと答えた人が8割という高い評価も得られており、人的資本データの「見える化」と「改善アクションの定着化」の両面で、AIの有効性が示されています。

人的資本開示におけるデータ活用の重要性(MS&ADインターリスク総研による講演)

MS&ADインターリスク総研の金田氏より、人的資本開示を取り巻く国内外の動向と、開示における「データ活用」の重要性についてご講演いただきました。

ジェンダーギャップ指数と女性の経済的自立を阻む構造的な要因

まず、国際的な視点からは、日本のジェンダーギャップの大きさが取り上げられ、OECD諸国の平均と比較しても賃金格差が約2倍あることや、世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数での日本の順位が146か国中、118位(2024年時点)と非常に低いことが紹介されました。

男女間の賃金格差
https://www.gender.go.jp/kaigi/renkei/kikaku/55/pdf/1.pdf
ジェンダーギャップ指数順位
https://www.gender.go.jp/international/int_syogaikoku/int_shihyo/index.html

次に、国内的な視点として、女性の経済的自立を阻む構造的な要因(育児・介護・家事労働の偏在)や、政府による開示義務の拡大が強調されました。とくに、従業員301名以上の企業を対象に、女性管理職比率の開示が求められている点が示されました。

労働政策審議会の雇用環境・均等分科会
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-rousei_126989.html

さらに、開示の実態については、数値データの提出にとどまり、戦略性やストーリー性に乏しいケースが多いという指摘がありました。

人的資本開示におけるデータ活用は「データドリブンな経営判断ツール」

特に、開示項目間の関連性(例:指標と方針、目標との整合性)を欠く例が多く、ステークホルダーの納得感に欠けるという課題が示されました。
こうした課題を解決するためには、以下のような「データの活用」が求められます:

  1. 経営戦略と連動したストーリー構築に向けたデータの整理と可視化
  2. ステークホルダー別に関心を持たれるデータの抽出と最適な伝達手法の設計
  3. 単なる報告ではなく、改善に向けた行動変容を促すデータの提示

金田氏は、これらの観点から、人的資本開示は単なる義務ではなく、「経営改善や働きがいの向上につながるデータドリブンな経営判断ツール」であるべきだと強調されました。

人的資本とDE&Iをつなぐ対話(甲斐氏・金田氏トークセッション)

ウェビナー後半では、NTT西日本の甲斐氏とMS&ADインターリスク総研の金田氏によるトークセッションが行われ、人的資本開示とDE&I推進をつなぐ実践が語られました。

「やらされ感」ではなく、楽しく取り組むDE&I

甲斐氏は「義務としてのDE&I推進ではうまくいかない。楽しく取り組むことが大事です」と強調し、社員が自発的に関われる仕組みの重要性を語られました。
「ワンオペなのに子犬も飼ってしまうほど日々忙しいが、それでも楽しくやれている」といった自身のエピソードも披露され、会場に親近感を生みました。

優先されるべきは"平等"ではなく"公正"

金田氏は「DE&Iの目的は"Equality(平等)"ではなく"Equity(公正)"である」と述べ、「優先席」のたとえ話を用いて、多様性推進の本質を説明されました。
「優先席が必要ないくらい、全員が立っていられるような社会が理想。ただし、現状はその前段階であり、公正なサポートが必要である」と説明されました。

ストーリーとデータの整合性が納得を生む

「女性活躍は男性社員への逆差別では?」という声に対しては、「"実力"とは何かを問い直すことが必要」と甲斐氏。
金田氏も「開示の形式だけでなく、ストーリーとデータの整合性が重要」と補足し、AIによる対話診断の例を紹介。「"なぜ今これをやるのか"をデータで示せるからこそ、社内でも納得を得やすい」と話されました。

傾聴・共感だけで終わらせず、行動に変える

AIツールで可視化された1例のデータからは「傾聴や共感はできているが、ポジティブフィードバックができていない」傾向が浮かび上がったとのこと。金田氏は「組織としてスコアが高い項目と低い項目のギャップこそが、課題発見と研修設計に役立つ」と指摘されました。

トークセッションではそのほかにも、「マジョリティにもマイノリティの側面はある」「感情的反発には丁寧な説明と共感が必要」など、人的資本開示を軸にしたDE&I推進の具体的な考え方と、社内コミュニケーションのリアルな課題が、参加者のみなさんと数多く共有されました。

参加者の声

  • 「人的資本開示が"義務"ではなく、戦略の一部であるという考え方にハッとしました」
  • 「DE&Iは"平等"ではなく"公正"をめざすもの、という例えが非常に腑に落ちました」
  • 「AIツールによるフィードバックが意外と納得感が高く、現場で使いやすそうです」
  • 「共感や傾聴はできても、ポジティブな声かけができていないというデータにドキッとしました」

まとめ

本ウェビナーでは、DE&I施策とAI活用を通じた組織変革の取り組みが、人的資本の開示や経営改善にどのように寄与しているかを共有いたしました。参加者の声からも、AIによる継続的な気づきが現場での実践につながっている様子が伺えました。
今後もより多くの企業で「karafuru AI」の活用が広がり、人的資本の見える化・改善・開示に貢献することが期待されます。

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