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Bizナレッジ

ICTで経営課題の解決に役立つコラムを掲載

快適なオフィスの実現

ベテランの経験則に頼らず、高品質なサービスを提供できる体制を実現。パソナの組織変革を促したkarafuru AI(カラフルAI)

「社会の問題点を解決する」という企業理念のもと、再就職支援事業という社会的意義の高いビジネスを、いかに持続可能で高品質なサービスとして提供し続けるか。

「経験則」に依存せず、サービスの均質化とコンサルタントのスキル向上を同時に実現するために株式会社パソナが導入したのが「karafuru AI(カラフルAI)」でした。

本記事では、karafuru AI導入の背景にあるビジネス上の課題や、人材育成における「AI × 人」のハイブリッドモデルが組織にもたらした具体的な変化について、株式会社パソナ 専務執行役員 キャリアアセット事業本部長兼営業本部長 西谷誠氏にお話を伺いました。

「人」と「キャリア」に関わる現場の最前線へ。

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-西谷氏
私は現在、キャリアアセット事業本部の専務執行役員兼事業本部長を務める他、パソナで運営する民間資格である「ワークライフファシリテーター協会」の理事長も兼務しています。

パソナには2001年に入社し、再就職支援の法人営業・人事コンサルティングからキャリアをスタートしました。就職氷河期には「ジョブカフェ」事業において若年層の支援に携わり、高年齢者雇用安定法(高齢法)の改正に伴いセーフプレースメント・トータルサービスをリリースする等、長年にわたり「人」と「キャリア」に関わる現場の最前線に立ってきました。

キャリアを築く上で、どのような考えや価値観を軸に活動してきましたか?

-西谷氏
最も大切にしているのは、パソナの企業理念でもある「社会の問題点を解決する」という点です。

特に、経営環境の変化による雇用調整実施を余儀なくされた企業や早期退職を選択される方々に寄り添いたい、何か力になりたいという思いを強く持っています。キャリア形成においても、所属する企業によって成長の機会に大きな差があります。支援を必要とするお一人おひとりにしっかり向き合うことが、私達の使命だと考えています。

失業状態は社会的な損失です。退職を選択された方々が、再就職支援サービスを通じて、一日も早く新たな活躍の場を見つけていただくことをしっかりサポートすることに加え、在職中に人生100年時代を意識した「キャリア自律」を支援することが個人と組織の活性化に重要となってきています。

また、常に意識していることは「企業という車は"利益"と"社会貢献"の両輪相まって前進する」というパソナグループのフィロソフィーです。社会貢献を持続可能にしていくためには、事業として利益を生み出していることが前提となります。

キャリアアセット事業本部の目的や目標はどのようなものでしょうか。

-西谷氏
パソナグループは2026年2月16日、創業50周年を迎えました。つぎの50年も社会から必要とされる再就職支援事業に進化させていかなければなりません。

その実現に向けて、キャリアアセット事業本部の目標は大きく2つあります。

  1. 「雇用のセーフティネット」の持続(アウトプレースメント)
    再就職支援事業において、退職を選択されたご利用者さまに対し、ご本人の希望に沿った再就職を早期に実現すること。
  2. 「キャリア自律」の促進(セーフプレースメント)
    人生100年時代の働き方やキャリアパス、定年後の生き方・働き方など、個人が自らの進むべき道を「自律的に意思決定できる」状態を作ること。

キャリアを複数回見直すことが当たり前となった今、退職を選択した方を支援するアウトプレースメントだけでなく、在職中からのキャリア自律支援、セーフプレースメントがますます重要になってきています。

それらの目標を達成するために、どのような施策を検討されているのでしょうか。

-西谷氏
これらの目標を達成するためには、既存の枠組みにとらわれないビジネスモデルの変革が必要だと考えています。

再就職支援という退職された方々だけを対象としたサービスを毎年繰り返しているだけでは事業の持続的発展はありえません。

そこで私たちは、「採用・教育・定着」といった上流領域まで事業範囲を広げています。

採用され、教育を受け経験を積み、定着し活躍され、そして後進にバトンタッチし、自らのセカンドキャリアを描いていく(役職定年や退職)という一連のサイクルの中で、「退職」だけを切り取るのではなく、その前段階である「採用・教育・定着」のフェーズからキャリア自律を支援する。こうした全体最適の視点で取り組むことで、社会課題の解決を通じてビジネスチャンスを創出していく戦略を取っています。

そうした状況の中で、karafuru AIはどのような経緯で導入を検討されたのでしょうか。

-西谷氏
karafuru AI導入のきっかけは、NTTグループのご担当者から、「AIを活用したサービス提供を開始したのですが、パソナさんと何かご一緒できないでしょうか」とお声がけいただいたことでした。

ちょうどその頃、私自身が抱えていた課題が2つありました。

1つは、再就職支援事業において活用できる「新しいキャリア研修の商材やツール」の探索です。

もう1つは、長年の課題である「サービスの均質化」でした。ご利用者さまアンケートを分析すると、全体としての満足度は高い一方で、「コンサルタントの質」に対し、一定数の厳しいご意見を頂戴しており、その改善が大きなテーマになっていました。

この「品質向上」と「新しい教育ツールの模索」という課題に対し、AIを活用できるのではないかと考え、karafuru AIの導入検討を開始しました。

「品質向上」と「新しい教育ツールの模索」を達成するためのツールの選定は、どのような基準でしたか?

-西谷氏
ツールを選ぶにあたって、私が重視した評価基準は3点あります。

1つ目がリアリティの追求です。
一般的なパッケージ研修で用いられる「仮想的なシチュエーション」や、美化された教材では、現場のコンサルタントには響きません。

そのため、「実際のご利用者さまからの厳しいアンケートやクレーム」をできるだけそのまま教材として実装できるか、つまり「現場のリアルな状況」に合わせてカスタマイズ可能かどうかを最重要視しました。

2つ目がアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)への気づきです。
経験を積めば積むほど、自身のやり方に固執しがちで、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)が生まれます。これを是正するためには、単なる知識習得ではなく、「自分の癖」を客観的に指摘してくれる機能が必要だと考えました。

最後に受け手が素直に受け止められるか。

上司や同僚から「笑顔が足りない」「言い方がきつい」と指摘されると、どうしても感情的な反発が生まれます。AIであれば、指摘を感情的に受け止めにくく、「素直に受け入れやすい」ことが期待できます。この点も重要な評価軸としました。

導入するにあたって、悩みや不安などはありましたか?

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-西谷氏
導入にあたっては、「社員の意識・スキル面のハードル」と「コンテンツの質への懸念」という、大きく2つの不安がありました。

1つ目は、新しい技術や変化に対して、現場の社員がどこまでついてこられるか・理解を示してくれるかという点です。

現場は日々の業務で多忙であり、「やらなければならないこと」と「本来やりたいこと」を重ね合わせる余裕がない場合があります。

また、特に経験を積んだコンサルタントほど、自分なりのやり方に自信を持っており、AIのような新しいツールに対して、無意識に拒否感を持つ可能性もありました。

2つ目は、AIに実装するコンテンツが本当に現場にとって有用なものになるか、現場の課題に即しているかという点でした。

結果的に不安は解消できましたか?

-西谷氏
そうですね。結果として、これらの不安は、主に次の2つの取り組みによって解消することができました。

1つ目が「現場の生々しいケース」を反映した設問作りです。

過去にいただいたさまざまなご意見やお叱りの声をQC手法で分析し、解決すべき課題の優先順位を整理しました。そのうえで、あえて「対応が難しいシチュエーション」や「実際にあった厳しいクレーム場面」をAIのシナリオとして実装しました。

「きれいな教材」を作るのではなく、「現場で実際に起きている生々しい課題」をそのまま教材化することで、社員に「これは自分たちのためのツールだ」と認識してもらい、課題から目を背けずに向き合ってもらうことを意図しました。

2つ目に「AI × 人」のハイブリッドな育成モデルの構築です。

AIを導入して「各自で自習してください」とするだけでは、スキルはなかなか定着しません。そこで、「AIによる自律学習」と「キャリアコンサルタント同士でシミュレーションする訓練、上司による1on1での深堀り」を組み合わせたハイブリッドな育成モデルを構築しました。

まずは、AI相手に繰り返しロールプレイ(壁打ち)を行い、AIから客観的なスコアやフィードバックを受けます。その後、AIでの練習を踏まえて、実際の研修や上司との面談の場で、ロールプレイとフィードバックを行います。

このように「AIという第三の視点」を介在させることで、それまで感覚的だった指導が数値に基づくものになり、上司も「AIのスコアでもこの点が課題だと出ているので、ここを重点的に伸ばしていこう」と、納得感のある指導がしやすくなりました。

そもそも、なぜAIである必要があったのでしょうか?

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淡路島にいるスタッフが、遠隔地から来客の支援を行う先進的な取り組みの様子。

-西谷氏
一番の理由は、「AIであれば素直になれる」という点です。

経験を積んだコンサルタントほど、年下の上司や同僚から指摘されると、反発心が生まれやすく、素直に受け止められない傾向があります。

一方でAIは感情を持たず、「アンコンシャス・バイアスを押し付けています」「傾聴がたりません」「このような言い換えができます」といった指摘を、淡々と事実ベースで行います。人が同じことを言うと人間関係に影響しかねない内容でも、AI相手であれば「確かにそうかもしれない」と冷静に受け止めやすくなります。

このように、「心理的安全性を担保しながらも、鋭いフィードバックを受けられる環境」をあえて用意したことが、現場での定着をスムーズにした大きな要因だと考えています。

karafuru AIによって、パソナの目標は実現できましたか?

-西谷氏
当初掲げていた「キャリア研修の新しい商材・ツールの開発」と「サービスの均質化」という2つの目標については、一定の成果が得られたと考えています。

人から言われると受け入れにくい指摘であっても、AI相手に事前にトレーニングを行うことで、「AIからこう指摘されたので、この点を改善しよう」と、素直に課題を受け入れ、修正しようとする姿勢が生まれました。これは、心理的安全性が担保されているからこそ起きた変化だと思います。

導入当初は、あまり積極的に取り組まないメンバーもいたようですが、真剣に取り組んだメンバーが実際の面談やロールプレイの場で成果を出し、鋭いフィードバックができるようになる姿を目の当たりにし、意識を改めるケースも出てきました。

また、AIの採点はあえて厳しめに設定しています。「褒められているうちは二流」という意識のもと、「AI相手に冷や汗をかく」経験を積むことで、本番のご利用者さま対応に向けたプロとしての覚悟や視座が高まってきていると感じています。

他のツールや将来的な技術を組み合わせることで、今後karafuru AIの活躍の場がより広がると思いますか?

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左・キャリアアセット事業本部室長 一番ケ瀬さま、右・同部の佐々木さま。パソナグルプの雇用創造への挑戦年表で撮影。

-西谷氏
今後、他のソリューションやシステムと組み合わせることで、karafuru AIの活用範囲はさらに広がると考えています。大きく分けて、次の3つの方向性を構想しています。

大きく分けると、「人事システム(タレントマネジメントシステム)との連携」「既存の教育・研修サービスとのパッケージ化」、そして「当社基幹システムとの連携」の3つが考えられます。

例えば、タレントマネジメントシステムとkarafuru AIを連携させる構想です。

人事評価はどうしても属人的になりがちですが、AIとのトレーニング履歴(ログイン回数やスコア推移など)を人事システムに連携することで、「まだ成果は表面化していないが、継続的に努力している」といったプロセス評価が可能になります。

二番目に「資格・教育講座」とのパッケージ化です。単なるツールとしてではなく、当社が提供している「ワークライフファシリテーター養成講座」などの教育カリキュラムの正式なメニューとして組み込むことを想定しています。

例えば、「講座期間中、karafuru AIで1か月間トレーニングし放題」といったパッケージ商品とすることで、資格取得者のスキルアップを支援しながら、講座自体の付加価値向上にもつなげられます。

三番目に基幹システムやマッチングシステムとの連携です。

私たちの本業である再就職支援の基幹システム(マッチングシステム)と連携させることで、AIとの面談・トレーニング結果を自動的にシステムへ取り込み、業務効率化を図ることも構想しています。

将来的には、コンサルタントだけでなく、再就職支援を受けているご利用者さま(求職者)自身にもkarafuru AIを活用いただくことを想定しています。

ご利用者さまがAI相手に面接練習を行い、その結果をコンサルタントが基幹システム上で確認しながらフォローすることで、「AI × 人」によるハイブリッドな支援体制を構築できると考えています。

実際に活用して、karafuru AIはどのような方におすすめできますか?

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左・キャリアアセット事業本部室長 一番ケ瀬さま、右・同部の佐々木さま。
-西谷氏
企業向けの研修でも、特定の課題を持った方々に強くおすすめしたいです。

「モチベーションが低い年上部下へのマネジメントに悩んでいる管理職」「ハラスメントを懸念し、指導やフィードバックに踏み込めない管理職・リーダー」「自身のキャリアイメージを描けない若手社員」「管理職になることに躊躇する中堅層」等々への「キャリア自律」支援ツールとして活用できると思います。

これまでは主に「サービスを提供するプロ(コンサルタント)」のためのツールとして活用してきましたが、今後は「サービスを享受するユーザー」自身が使い、自らの力を高めていくためのプラットフォームにもなり得ると考えています。

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